【新型コロナ】感染拡大・収束期間は人口密度や湿度にも関係:名古屋工業大学
名古屋工業大学の研究グループが、今回新型コロナウイルスの感染の実態を、人口密度や気温、湿度などの条件に照らして分析し、その研究結果を発表した。
人口密度や温度、湿度を考慮して分析
この研究を行ったのは、名古屋工業大学の大学院工学研究科の平田晃正教授、Gomez Jose准教授、安在大祐准教授、小寺紗千子特任助教などの研究チームだ。
そもそもこれまでの新型コロナの理論モデルは、温湿度や人口密度などを考慮していないものがほとんど。しかも海外の研究でも、地域のばらつきが大きく、かつ影響を与える要因が多いゆえに、感染者数の相違が何の要因により起因したものかが分かっていなかったという。
研究グループは、コロナウイルスに関する統計データを用いて感染拡大期間および収束期間がどの程度の長さなのか、またコロナウイルスの罹患率の地域差について分析。
その結果、感染拡大・収束期間は、これまでほとんど指摘されていなかった人口密度との関係が強いことが確認され、いわゆる「三密」の効果は人口密度で近似されることが分かったという。
感染拡大・収束期間は人口密度と関係
分析にあたり研究グループは、県別の一日あたりの新規陽性者数の最大値が10名以上であった19の都府県(東京都、大阪府、茨城、群馬、千葉、神奈川、富山、石川、岐阜、愛知、京都、兵庫、福岡、沖縄県、埼玉県、静岡県、滋賀県、広島県、佐賀県)を対象にし、検査日、検査結果などの1日あたりのばらつきの影響を緩和するため、7日間の移動平均を用いたという。
その上ではじめに、各県における感染拡大期間・収束期間を算出したのち、様々な因子と統計分析を実施。特に感染拡大・収束期間が、どの要因(気象や国土、人口など)と密接な関係があるかに着目したそうだ。
これにより感染拡大などが、人口密度との関係が深いことが確認されると同時に、インフルエンザなど別の感染症との関係が指摘されていた絶対湿度とも深い関係があることが明らかとなる。
例えば、温度や湿度(絶対湿度)が同じ場合、人口密度が約5倍になると、拡大と収束の期間が5日程度延びるという。この他、気温や湿度という因子との相関関係もはっきりと出て、高温、多湿になると拡大と収束の期間が短くなる傾向があることも明らかになった。
通勤圏内も拡大・収束期間が長くなる傾向
また研究グループは、人口密度と気温、絶対湿度の3変数を用いて多変量解析を実施。この解析で得られた数式からの推定値は、実際の拡大・収束期間とよく一致していたという。
しかも東京、大阪、愛知、福岡などへの通勤圏内である地域(例えば、神奈川、千葉、兵庫、京都、佐賀など)における拡大・縮小期間は、都市中心部の影響を受け、推定期間よりも長くなる傾向があることも判明したそうだ。
罹患率なども高齢者の割合や気温、湿度に影響
さらに新型コロナウイルスの罹患率についても、緊急事態宣言が解除された2020年5月25日までの対象都府県における累計感染者数、死亡者数を対象に、どの因子との関係が強いかを統計分析。
ここでは一日あたりの新規感染者数の最大値が10名以上、かつ死亡者数の最大値が4名以上の14都府県(東京都、大阪府、茨城、群馬、千葉、神奈川、富山、石川、岐阜、愛知、京都、兵庫、福岡、沖縄県)を対象とした。
この結果、累積感染者数・死亡者数も人口密度の影響を受けることが判明し、また累積感染者数を人口密度で正規化した場合、高齢者の占める割合、気温、絶対湿度との関係があることも明らかとなったという。
しかも人口密度、高齢者の割合、気温・絶対湿度の最大・最小値の6変数による多変量解析を行ったところ、予測結果と実際の感染者数との間によい一致が得られたそうだ。
これらの知見は、人口密度に相当するソーシャルディスタンシングの重要性を示唆するものだという。また、高温多湿の条件になるとその拡大・収束期間および感染者数はやや減少する傾向にあるとしている。
新型コロナウイルスの第二波が懸念される中、さらには今後のパンデミックにおいて、人口密度および気象条件により予測結果を提供することが期待されている。(了)
出典元:名古屋工業大学:新型コロナウィルス、人口密度と気温・絶対湿度が影響 ~新型コロナウィルスの拡大・収束期間、感染者数・死者数の分析結果について~(6/17)