オランダで毒性の強いHIVを検出、その特徴とは?
先日、オランダなどで感染性の強いHIV(Human Immunodeficiency Virus:ヒト免疫不全ウイルス)が見つかったのを、ご存じだろうか?
※HIVとはAIDS(後天性免疫不全症候群)を発症させるウイルスのこと。
免疫細胞の減少速度が2倍
NBCによると、国際的な研究チームが、強毒性で感染力の強いHIVの株を特定し、2月3日に研究論文が「Science」に発表されたという。
このウイルス株は、1990年代にオランダで流行し始めたと考えられ、100人以上が感染したとみられている。
またこの株は、未治療のまま放置すると、血液中のウイルス量が非常に多くなり、主要な免疫細胞の減少速度が、通常のHIV疾患の進行と比較して2倍になることが分かっているそうだ。
ウイルス量が通常より多いことを確認
研究者たちは、まずヨーロッパとウガンダのエイズ研究に参加していたメンバーの中で、診断後に異常に高いウイルス量を示した17人を特定したという。
このうち15人は、オランダを拠点とする別のコホート研究(共通の特性を持つ集団を追跡する研究)にも登録されており、1人はベルギーに、1人はスイスに住んでいたそうだ。
次に研究者らは、オランダの別の研究に参加したエイズ患者の血液サンプル、6706件を調査。遺伝子解析の結果、強毒性を持った近縁種のHIV株に感染している92人が発見されたという。
さらに研究者は、合わせて109人(17人+92人)の治療前の経過を分析。同じHIVサブタイプを持ちながら異なるウイルス株を持つ他の6604人と比較して、109人のウイルス量が通常3.5倍から5.5倍高いことが確認されたという。
抗レトロウイルス治療で効果
実はこの変異株は、未治療のまま放置すると、血液中のウイルス量が非常に多くなり、主要な免疫細胞の減少速度が、通常のHIV疾患の進行と比較して2倍になることが分かっている。
しかしオックスフォード大学の科学者が率いる研究チームは、アムステルダムの研究機関「Stichting HIV Monitoring」の協力を得て、これらの知見は警戒すべきものではないことを強調した。
この特定のHIV株は、抗レトロウイルス治療によく反応し、感染をブロックする利点もあるという。
またこのウイルス株は、すでに他の人に感染している可能性もあるが、この株を持つ人が治療を始めれば、病気や死亡のリスクが高まることはないそうだ。
このことは他の研究者たちも認めており、今回の論文の著者たちも、世界的なパニックになる事態を避けたいと考えている。(了)
出典元:NBC:A ‘highly virulent’ HIV strain is ‘no cause for alarm,’ scientists say(2/4)