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全ゲノム解析により癌細胞の変異パターンを発見、個別治療に生かせる可能性

全ゲノム解析により癌細胞の変異パターンを発見、個別治療に生かせる可能性
flickr_Aurélien Adoue

 

イギリスで数千個の腫瘍についての分析が行われ、癌に関する新たな研究内容が発表された。

 

1万2000人以上の全ゲノム解析を行う

 

この研究を行ったのはイギリスのケンブリッジ大学・ゲノム医学・バイオインフォマティクスの研究者たちだ。

 

彼らは1万2000人以上のイギリス保健サービス(NHS)の癌患者の、完全な遺伝子構成や全ゲノム配列(WGS)を分析したという。

 

その結果、癌のDNAから、新しい58の「変異サイン(痕跡・徴候)」を発見することができたそうだ。

 

各患者に個別の治療法を提供

 

これらの変異からは、患者が過去に喫煙や紫外線などの環境要因にさらされたかどうかなどの、手がかりが得られるという。

 

そして変異のサインによって、医師は各患者の腫瘍を調べ、特定の治療法や薬剤に適合させることができるようになるそうだ。

 

ただし、これらの変異のパターンは、細胞の遺伝子構造を特定する全ゲノム配列解析によって得られる膨大なデータを分析することによってしか、発見することができなかった。

 

どの「足跡」が重要なのかを特定

 

本研究の主執筆者であるSerena Nik-Zainal氏は、「変異サイン」について、次のように説明している。

 

「砂浜に何千もの足跡がある、とてもにぎやかなビーチを見ているようなものです。素人目には、足跡はランダムで意味がないように見えます。しかし、足跡をよく観察すれば、動物か人間か、大人か子供か、どの方向に移動したのか、などなど、何が起きていたのか、多くのことを知ることができるのです。突然変異のサインについても同じことが言えます。全ゲノム配列を使うことで、どの “足跡 “が適切で重要なのかを特定し、癌の発生を通じて何が起こったのかを明らかにすることができるのです」

 

ケンブリッジ大学の研究員で、今回の研究論文の筆頭著者であるAndrea Degasperi博士も次のように語っている。

 

「全ゲノム配列は、各個人の癌に寄与する全ての変異の全体像を、私たちに提供します。1つの癌につき数千もの変異が存在するため、私たちは患者間の共通点と相違点を探すための前例のない力を持ちました。そうすることで、58の新しい変異サインを発見し、癌に関する知識を広めることができたのです」

 

またイギリス癌研究所の最高責任者であるMichelle Mitchell氏も、次のように述べている。

 

「この研究は、癌がどのように発症したのか、癌がどのように振る舞うのか、どのような治療法が最も効果的なのかを知る手がかりとして、全ゲノム配列検査がいかに強力なものであるかを示しています」(了)

 

出典元:The Guardian:‘Like fingerprints at a crime scene’: study finds new clues about causes of cancer(4/22)

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