妊娠初期の母親が有毒な化学物質にさらされると、子供の精子数と質が低下
化学物質と精子の関係が、新たに発表された研究結果によって明らかにされた。
妊娠初期の母親と子供を調査
この研究を行ったのは、デンマークのコペンハーゲン大学病院などの研究者らだ。
彼らは、1996年から2002年の間に、妊娠第一期の女性の血液サンプルと、その子供である若い男性864人の精液の特徴と生殖ホルモンを調べたという。
その結果、母親が妊娠初期に「永遠の化学物質」と呼ばれるPFASにさらされると、後に子供の精子の数や質が低下することが確認されたそうだ。
この研究は10月5日、学術誌「Environmental Health Perspectives」において発表された。
精子の数が減少、泳がない精子も
PFAS(パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)は、水や汚れ、熱に強い製品を作るために使用される約1万2000種類の化学物質の総称であり、人間や環境に蓄積され、自然に分解されないため、「永遠の化学物質」と呼ばれている。
またPFASは、ホルモンや胎児の発達を乱すことが知られており、癌や出生異常、肝臓病、腎臓病、免疫力低下など、PFASによるものと考えられる深刻な健康問題に関連する証拠も増えているそうだ。
研究者らはまず、母親の血液から15種類のPFAS化合物を調べ、十分なほど高濃度の7種類の化合物を発見したという。
そしてPFASに曝されるレベルが高い母親から生まれた子供は、成長しても精子の数が少なく、不定形精子(精子が泳がない)のレベルが高いケースが、より頻繁にあったそうだ。
また、非進行性精子(まっすぐ泳がない、あるいは円を描いて泳ぐ精子)の量も増加していたという。これらの精子は、いずれも不妊の原因になると言われている。
不妊症の割合は世界的に増加傾向
そもそも不妊症の割合は世界的に増加傾向にあり、その理由は不明であることが多いとされてきた。
またPFASはあらゆる場所に偏在する物質であり、98%のアメリカ人の血液中に含まれていると推定され、胎盤のバリアを通過して成長中の胎児に蓄積される可能性もあるという。
最近、世界中の臍帯血に関する40の研究を分析したところ、調べた3万件のサンプルすべてから、PFASが検出されたそうだ。
しかも妊娠初期は男性の生殖器の「主要な発達期間」であり、妊娠の最初の3カ月間に子宮内で精巣が発達すると考えられている。
今回の研究に携わったコペンハーゲン大学病院の研究共著者、サンドラ・ソガード・トッテンボーグ(Sandra Søgaard Tøttenborg)氏は、次のように述べている。
「このデリケートなプロセスに関与するホルモンを模倣したり妨害したりする物質にさらされると、後年の精液の質に影響を及ぼす可能性があることは理にかなっています」(了)
出典元:The Guardian:Study links in utero ‘forever chemical’ exposure to low sperm count and mobility(10/5)