世界の見方を変えよう!ボストンの公立校が教室の世界地図を変更することを決定
日本でも長い間親しまれてきたメルカトル図法の世界地図。これを授業で使用するのを止め、代わりに別の世界地図を使うことをアメリカのある町が決め、注目されている。
●採用されたのはガル・ピーターズ図法
その町とはマサチューセッツ州北東部にあるボストン。
その学区にある約600に及ぶ公立の小中高の学校は、これまで長い間使われてきたメルカトル図法の世界地図の代わりに、ガル・ピーターズ図法で描かれた地図を使うことを決定した。
その理由はガル・ピーターズ図法の地図の方がそれぞれの大陸や国の大きさなどが、現実に近い比率で表されているからだという。
●メルカトル図法では南米やアフリカが小さい
メルカトル図法は1569年にフランドル地方(フランス北部やオランダ南部など)出身のGerardus Mercator氏によって作られ、緯度や経度が直線になるため、羅針盤を基に航海していた当時は非常に便利だったと言われている。
そしてキリスト教の広がりにより、この図法で描かれた地図が次第に世界でスタンダードになっていく。
しかしこの図法では陸地の面積などが不正確。実際にヨーロッパや北米大陸などに比べて、アフリカや南米大陸のサイズが小さくなっているそうだ。
●陸地の大きさがより正確に表される
一方、ガル・ピーターズ図法はドイツの歴史学者Arno Peters 氏が1974年に発表したもので、19世紀の地図製作者であったJames Gallと同じものと後に判明したため、2人の名前をとってガル・ピーターズ図法と名付けられたとか。
その特徴は陸地の大きさがより正確に表されていること。ただし地球儀ほど正確ではなく、3次元の世界を2次元のフォーマットにしたため、それぞれの国や大陸の形も歪んでしまう欠点もあるという。
しかしこれにより、メルカトル図法の背景にある「帝国主義の権力の強調」という考えを改めることに貢献できたそうだ。
(この地図はボストンで実際に使用されているものとは異なる)
●「これはパラダイム・シフト」
今回、ボストンの公立学校で採用されたガル・ピーターズ図法の地図は、アフリカが北米大陸よりもずっと大きく描写され、南米大陸もメルカトル図法よりはるかに広く描かれているという。
公立学校を管轄する Colin Rose氏はGuardianの取材に対し「メルカトル図法は、ヨーロッパを世界の中心に見ようとする象徴的なものです。人々の遺産が根付いている場所のイメージ、しかも正確ではないものを見せられれば、生徒に影響を及ぼします」とコメント。
さらにBoston Globeの取材に対し「これはパラダイム・シフトなんです。私たちはまさに西欧中心主義と言われる固定観念を持たされています。別の視点で世界を見るにはどうすればいいか。これはそのための分岐点なのです」と語っている。
Natacha Scott氏も取材に対し「何人かの生徒たちは『まさか、これ本当?』『アフリカを見てよ、ずっと大きいよ』などと言っていました。そのリアクションを見るのは本当に面白かったです。同時に、自ら知って考えたことに疑問を持つ彼らの姿を見るのは、驚くほど興味深いことでした」と語っている。(了)
出展元:the guardian:Boston public schools map switch aims to amend 500 years of distortion(3/19)
出展元:Boston Globe:Boston schools ditch conventional world maps in favor of this one(3/16)