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モロッコで冬もサマータイム適用、大混乱の背景には当国ならではの事情があった!

モロッコで冬もサマータイム適用、大混乱の背景には当国ならではの事情があった!
Facebook/Kamal Serrssif

北アフリカのモロッコで、サマータイムの適用をめぐり、国民の間でちょっとした騒ぎが起こっている。

 

本来なら先月の27日をもって終了するとされていたサマータイムを、今後年間を通じて適用すると、政府が突如、終了前日の26日に発表したのだ。

 

これにより、夜明け前に登校しなければならなくなった生徒たちによるデモが各地で発生し、政府は今回の措置の説明と対応に追われている。

 

突然決定されたサマータイム継続の政令

 

モロッコは、イギリスと同じグリニッジ標準時(GMT)であり、日本との時差は9時間。そのうち3月の最終日曜日から10月の最終日曜日まで、時間を1時間進めたサマータイムを適用していた。(サマータイム時、日本との時差は8時間となる。)

 

今年のサマータイムも、この週末で終わりだと誰もが思っていた先月の10月26日(金)、政府は臨時閣議を開催。今後年間を通じてサマータイム(GMT+1)を適用するという政令を閣議決定し、同政令は即日施行されるとした。

 

この決定に混乱する国民たち

 

この突然の発表に国民は戸惑った。実際、電子機器の多くは夏時間から冬時間に自動的に切り替わる設定となっており、28日(日)の朝、一体今何時なのか分からないという人々が続出、怒りと混乱を招く結果となった。

 

これにより大きな影響を受けることになったのが、学校に通う生徒たちだ。通常、モロッコの授業開始は朝8時だが、実際はこれまでの7時の登校となり、まだ夜の明ける前の暗いうちから通わなければならなくなってしまったからだ。(11月15日現在、モロッコの夜明けは7時40分前後。)

 

生徒たちによる抗議デモが各地で発生

 

そしてこれに不満を募らせた生徒たちによる抗議デモが、各地で相次いで発生した。

 

تلاميذ ثانوية سجلماسة مقاطعين للدراسة بسبب برنامج توقيت الدراسي !

Errachidia – عاصمة الجهة‎さんの投稿 2018年11月7日水曜日

 

塔に登り、時計の針を1時間戻す生徒たち。

 

#Sraghna ✌🏻✌🏻

Kamal Serrssifさんの投稿 2018年11月8日木曜日

二転三転する政府の説明

 

これを受け教育省は、午前の授業開始を1時間遅らせ、9時から13時までとすると発表した。

 

しかし、午後からの授業開始はこれまでと同様14時からだったため、昼食時間が1時間のみとなり、また混乱を招くことに。(モロッコには給食はなく、生徒たちは一度帰宅し、自宅で昼食を済ませたのちに再度登校する。)

 

その後、教育省は発表内容を修正し、午後開始は15時からとなった。

 

下の動画は、昼休憩が1時間となったことを皮肉ったパロディ。

 

https://www.facebook.com/196046404379286/videos/2074916802560627/?t=1

サマータイムを無視する人々

 

政府による突然の決定により混乱を招いてしまった今回の騒動だが、元々サマータイムそのものを無視して暮らしている人はモロッコに少なくない。

 

というのも、モロッコは国民の大多数がイスラム教徒(ムスリム)であり、毎日礼拝を行うことはムスリムの義務とされている。そして早朝、昼間、夕方、日没、夜と5回ある礼拝時間に合わせて人々は行動するのだ。

 

例えば、通常昼食は昼間の礼拝の後にとる。モスクから礼拝を告げるアザーンが響くのが12時過ぎ。人々はモスクへ向かい礼拝を済ませ、その後昼食となるので、大体食事は13時頃からとなる。

 

しかしサマータイムが始まると、時計は1時間進むので、昨日まで12時過ぎだったアザーンは13時過ぎの呼びかけとなる。(礼拝時間は時計の時刻ではなく、太陽の動きと影で決められる。)

 

そうなると、昼食は14時頃からとなり、理由を知らない旅行者などからすると「モロッコの昼食時間は遅いな」と感じることになるのである。

 

昼食は何時から、ではなく、あくまで礼拝が終わった後にという考え方。サマータイム中も、時計の時刻に合わせて生活する欧米との大きな違いがここにある。

 

「旧時間」と「新時間」が存在する世界

 

そこでモロッコ人の中には、サマータイム中も時計の針を進めずに「旧時間」のまま過ごす人もいるくらいだ。

 

こういう人たちと待ち合わせなどをする際には、注意が必要である。彼らのいう時間が、「新時間(サマータイム)」なのか「旧時間」なのかを確認しなければならないからだ。

 

企業や学校、病院、交通や行政機関等はもちろん「新時間」で動いているので、「旧時間」をベースにする人たちというのは、自営業や農家等、地方部に多い。

 

こういう人たちは、家庭内の生活は「旧時間」、子供の学校や通院の際には「新時間」を意識するという、常に頭の中で2つの時間を使い分けている。しかし混乱するとして、サマータイムに否定的な人々も多い。

 

暫定的試行期間だとする政府

 

「旧時間」をベースにしていた人たちにとって、待ちに待ったサマータイムの終了だったのだが、それが年間を通しての継続となったのだから、喜びから一転して怒りに変わったのも理解できる。

 

一方、政府は1時間時計を早めることによって得られる電力抑止の効果について強調している。

 

しかし、現在は試行期間だとし、支障のある際には時間の調整を行うよう、学校や企業に通達した。

 

政府によるサマータイム継続という突然の決定、暫定的だとはいえ少し性急過ぎた感は否めない。(了)

 

 

出典元:AFP:サマータイムのせいで登校が夜明け前に、モロッコで生徒らが抗議デモ(10/11)

出典元:La République des Pyrénées:Maroc: nouvelles manifestations d’élèves contre le maintien de l’heure d’été (11/12)

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