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完成はわずか5%…米国の砂漠の中で忘れ去られつつある“近未来都市”とは

完成はわずか5%…米国の砂漠の中で忘れ去られつつある“近未来都市”とは
© 2017 Cosanti Foundation

世界には建設半ばであったにも関わらず、計画が頓挫し、忘れ去られた建物が数多く存在する。

 

米国アリゾナ州にも建設途中であったにも関わらず、多くの人が去り、ほぼ放棄された状態の“近未来都市”が存在するという。

 

一体、なぜそのようなことになってしまったのだろうか。

 

環境に優しい都市を目指し70年代から建設

 

忘れられた“近未来都市”とされるのは、米国アリゾナ州のソノラ砂漠に位置する人工都市「Arcosanti」。

 

同都市は非営利団体「Cosanti Foundation」の下、1970年代から数十年にわたり建設が続けられている。

 

その建設目的は都市の無計画な拡大を抑えながら、車の利用を最小限に留めたり、太陽光発電を利用したりするなど、環境に優しい近未来都市を実現させること。

 

© 2017 Cosanti Foundation

 

これを発案したイタリア人建築家Paolo Soleri氏は、米国の多くの都市において市街地が無秩序に拡大する現状に危機感を抱いており、自身のアイデアを“都市の内破(爆縮・内部崩壊:urban implosion)”と呼んだという。

 

またSoleri氏は“アーコロジー(Arcology)”という概念をも発案。日本語では“完全環境計画都市”と訳されるこの概念は、高い人口密度で住人が居住しながらも、持続可能性が高く、自然と調和した都市建設を目指すものとして知られることとなった。

 

Soleri氏自身はArcosanti建設最中の2013年、この世を去っている。

 

数十年に及ぶ建設でも完成は5%

 

しかしそんな理想を掲げ建設が進められているArcosantiは、現在においても完成したのはわずか5%ほど。

 

1970年代に建設が開始されていながらも、1989年以来新たな建築物は完成していないという。

 

さらに同都市を訪れる人は年間5万人ほどにも達するものの、その多くは都市建設について学ぶ学生か、Arcosanti内に位置する円形競技場で開かれるイベントへの参加者とのこと。住人はわずか80人ほどに留まるという。

 

© 2017 Cosanti Foundation

 

このような現状となってしまった最大の理由としては、建設当初からの資金不足の問題があるようだ。

 

Arcosantiの建設地は融資によって購入されたものの、建設のための労働力としては学生から建築家、さらにはジャーナリストや映画監督までもが有志により集められ、無償で働いたとのこと。Soleri氏自身も、彼らと共に作業現場で勤務したとされている。

 

しかし時と共にSoleri氏を支持し、無償で労働に貢献する人の数は減少。さらにArcosanti建設のためかかる費用が莫大であるが故に、資金不足に陥り、建設速度が低下する中で多くの人が去ってしまったようだ。

 

Facebook / Arcosanti

Soleri氏の理想とした都市計画が米国外で進む皮肉

 

一方Arcosantiの建設をよそに、Soleri氏が理想とした近未来的な都市建設は米国外で進みつつある。

 

カタールやサウジアラビアにおいては、空気圧を利用したゴミの輸送を可能とさせるチューブや、ドローンのタクシー、太陽光を利用したスカイウォークに、ロボットといった先進技術を用いた環境に優しい都市建設を目指しているほか、マレーシアでは自動で水やりを行う植物や自動で修復を行う窓の実現が目指されているという。

 

カナダにおいても、グーグルを親会社に持つ企業「Alphabet」がトロントにおいて自動運転車用の道路や地下にセンサーが埋め込まれたコミュニティーの建設を計画しており、近未来都市を実現させようとする試みは世界各国において開始されている。

 

そのような中において、Arcosantiは時代遅れの“ヒッピーの村”などと揶揄される始末となっている。

 

Facebook / Arcosanti

Arcosantiへの移住を決意する人は今も存在

 

しかしこのような現状にあっても、Arcosantiのコンセプトに惹かれ移住を決意する人は未だ存在する。

 

Arcosantiに移住してから約1年というTim Bellさんも、そんな中の一人。

 

同都市を“今までに見た何物とも異なる”と形容するBellさんは、現在ではArcosantiで出会った妻と他の住人と共に、4つの寝室と2つのリビングルームなどを持つ住宅で暮らす。

 

© 2017 Cosanti Foundation

 

Bellさんによると、Arcosantiに暮らす大半の住人は30歳以下で、Soleri氏についても良く知らない世代であるという。

 

また住人のうち半数は半年から5年程度の短期間にわたり暮らす人で、30%程度は5年から15年程度の長期間にわたり居住する者、そして残りが計画当初から住み、生涯にわたってArcosantiで生活することが予想される人々であるとしている。

 

Facebook / Arcosanti

 

環境に優しい未来都市となることを目指し、建設が開始されたArcosanti。多くの人がその存在を忘れようとも、Soleri氏の掲げた理念の下、僅かながらと言えど今も移住を決意する人がいるということは興味深いことである。(了)

 

出典:Fox News:This unfinished Arizona ‘futuristic hippie commune’ has a Problem(6/7)

出典:ScienceAlertThere’s an Unfinished ‘City of The Future’ Tucked Away in The Arizona Desert (6/2)

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