Switch news

知っておきたい世界のニュース

【新型コロナ】武漢研究所からの「流出説」の経緯、「バットウーマン」と呼ばれる女性研究者とは?

【新型コロナ】武漢研究所からの「流出説」の経緯、「バットウーマン」と呼ばれる女性研究者とは?
写真AC

新型コロナウイルスが武漢の研究所から流出したとする説が唱えられているが、現在まで何がどのように語られてきたのだろうか。

 

当初の発生源は海鮮市場とされてきた

 

昨年の12月に中国湖北省の武漢市で新型コロナウイルスの感染が拡大してから、ウイルスの発生源は同市にある海鮮市場だとされてきた。

 

その後、米メディアの「ワシントン・タイムズ」は1月26日、イスラエルの軍事専門家のコメントとして、新型コロナウイルスの感染源が「武漢ウイルス研究所」の可能性があり、同研究所が関わる「生物兵器計画」とつながっている、などと報じた

 

しかしその後、米有力紙「ワシントン・ポスト」は、新型コロナウイルスが人間によって作られたとする根拠を否定する記事を投稿。特性を調査した結果、新型コロナが自然に発生した野生生物由来のウイルスであり、人間によって変異させられたものではないとの専門家の意見を紹介した。

 

この調査は Kristian G. Andersen氏の率いる研究チームにより行われ、その内容は3月17日に「Nature Medicine」において発表されたとも伝えられている。

 

研究は極秘ではなく、海外の研究者も参加

 

また武漢ウイルス研究所が新型コロナの発生源ではないとする理由として、次のような点が挙げられてきた。

 

  • そもそもこの研究所での作業や研究内容が極秘ではないこと。
  • さまざまなコウモリに関する研究結果の多くが、専門誌において発表されていること。
  • 欧米の研究パートナーの多くも、この研究プロジェクトに関与していたこと

さらに英紙デイリー・メールは、アメリカ政府が武漢にある研究所に対し、財政的な支援を行ってきたとも伝えている。

 

flickr_amareta kelly

研究所流出説を完全に否定できず

 

にもかかわらず、武漢の研究所を経由して、新型コロナのパンデミックが広がっていったことを確実に否定できたわけでもない。

 

実際、科学誌「Science」は1月の終わり頃に、新型コロナウイルスが海鮮市場で「動物」から「ヒト」へと感染したことを疑問視する記事を公開している。

 

また医学誌「The Lancet」も、新型コロナウイルスに感染した最初の41人のうち13人は、武漢にある市場へは行っていなかったと結論づけている。

 

さらに最初に感染したとされる「患者ゼロ(0番目の患者)」が、2019年11月の早い段階で感染していた可能性が明らかとなったそうだ。

 

しかもこの「患者ゼロ」は、海鮮市場とは全く接触がなかったという。

 

「バットウーマン」と呼ばれる女性教授

 

そんな中で注目を集めたのは、武漢ウイルス研究所で実際に研究を行っていた石正丽(Shi Zhengli)教授だ。

 

彼女は「Nature」2月号にもコウモリのウイルスに関する研究論文を発表しており、今回の流出説について鍵となる人物で、「バットウーマン」と呼ばれている。

 

香港紙「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」によれば、石正丽教授はこれまでに中国にある28の洞窟でコウモリの糞などを採取し、それを湖北省武漢市にある武漢ウイルス研究所(National Biosafety Laboratory)へ運び、10年以上も研究を続け、コウモリに関連したウイルスの膨大なデータベースを築きあげてきたという。

 

また2019年には研究チームとともに、コロナウイルスに関する広範な研究論文も発表している。

 

そして中国で新型コロナウイルスの感染が確認された時、石正丽教授のチームが最初に、肺炎をもたらすこのウイルスがコウモリの野生株の直接の子孫であることを突き止めたそうだ。

 

この野生株は彼女たちが雲南省の洞窟でフルーツ・コウモリの糞から採取したものとされ、新型コロナはこの遺伝子の96%を共有していたと言われている。

 

当時、石正丽教授のチームも世界の多くの研究者らと同じように、新型コロナの遺伝子を解読し、分子構造を分析。その結果、新型コロナウイルスのゲノム配列は世界のデータベースに早急にアップロードされ、検査キットの作成にも役立てられてきた。

 

研究所流出疑惑から非難の対象に

 

このような石正丽教授の役割は通常、賞賛されるものだが、その後新型コロナウイルスが武漢の研究所から流出したのではないかとの疑惑が囁かれるようになり、石正丽教授はネットで非難を浴びることに。

 

このため彼女は全ての友人に対してWeChatを使い「私は自分の人生に誓って言いますが、新型コロナウイルスは研究所とは関係ありません」とメッセージを送ったという。

 

さらにその後も、いくつかのメディアでインタビューを受けながらも、研究所流出の疑惑を否定し続けた。

 

中国政府がサンプル破棄を命じた?

 

しかしそれからも、中国政府によるさまざまな隠蔽の動きが伝えられ、ウイルスが研究所から漏れ出たとする説が唱えられ続けた。

 

英紙などは、1月3日に中国の国家衛生健康委員会が研究所にあるウイルスのサンプルを破棄するよう命じ、ウイルスに関する情報を公開しないよう命じたと報じている。

 

また「患者ゼロ」と呼ばれる武漢ウイルス研究所の研究者であるHuang Yan Ling氏が、その後姿を消したとも報じられ、研究所のサイトにある経歴なども消されたと伝えた。もっとも研究所側は、Ling氏が「患者ゼロ」とは認めていない。

 

さらに石正丽教授が行方不明になったや、西側へ亡命するのではとも報じられたが、その後彼女は現在の自分の状況は変わらないとネット上で報告した。

 

 

アメリカ政府は、研究所からの流出説についていくつかの証拠があると述べているが、現在もその内容ついては明らかにされていない。

 

ただし「ワシントン・ポスト紙」は、この研究所が行っていたコウモリのコロナウイルスの研究が、重症急性呼吸器症候群(SARS)のようなパンデミックを起こしかねないと、視察した米当局者たちが懸念していたと伝えている。詳細についてはBBC日本語版が伝えている。

 

次第に「流出説」が注目され始めているが、果たして真相はどうなのだろうか?(了)

 

 

出典元:DW:Did coronavirus really originate in a Chinese laboratory?(4/18)

出典元:South China Morning Post:Coronavirus: bat scientist’s cave exploits offer hope to beat virus ‘sneakier than Sars’(2/6)

出典元:MailOnline:China’s ‘Bat Woman’ Shi Zhengli denies ‘trying to defect with confidential files’ as bombshell ‘Five Eyes’ Western intelligence dossier claims country lied about coronavirus transmission and refused to help other countries prepare a vaccine(5/2)

Return Top