Switch news

知っておきたい世界のニュース

【ダイヤモンド・プリンセス号】船内で新型コロナの感染拡大が起きたのはなぜ?

【ダイヤモンド・プリンセス号】船内で新型コロナの感染拡大が起きたのはなぜ?
flickr_mstk east

横浜の大黒埠頭に接岸された豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス号」。14日間の保健観察期間を終え、乗客の一部が下船を始めた。

 

このニュースはイギリスのBBCを始め、海外のメディアでも報じられている。

 

隔離期間が終了し、下船が始まる

 

新型コロナウイルス「Covid-19」の感染拡大への懸念により、2月5日から始まった船内での隔離は予定の14日間が過ぎ、一部の乗客が下船を始めた。

 

検査で陰性となり、かつ新型肺炎の症状が見られない約500人は19日から順次下船が許され、翌日にもさらに乗客が下ろされる予定となっている。

 

ただし検査で陰性となった人でも、感染した人(陽性となった人)と同じ客室にいた人は、今後も隔離が継続されていくという。

 

中国以外で最も大きな感染源

 

このように国内に感染が広まらないよう、慎重に隔離処置がとられているように見えるが、すでにご承知のように、船内では毎日感染者が増え、現時点では少なくとも542人に達した。

 

これは中国以外で、もっとも多くの感染者の「集団」だとされている。

 

このことからすでに船内で感染が拡大していると思われるが、加藤厚生労働大臣は感染者の多くが2月5日の隔離前に感染したとの見方を示した。実際記者とのやり取りは以下になる。

 

記者:クルーズ船の話ですが、5日に感染防止策が徹底され始めて以降に感染が広がっているかどうかということについてどのように評価されているでしょうか。

大臣:現在発症されている方、基本的にはそうした前の段階において感染があり、それが発症されているのではないかというふうに我々はみているところであります。

記者:潜伏期間は通院1日目から12.5日と言われているので、5日以降に感染されている方もいらっしゃる可能性もあると思うのですが、その辺はいかがでしょうか。

大臣:そこは正直言って、どこで感染したかというのは必ずしも判別できない訳であります。したがって、我々としてはその範囲で感染されたのではないか、逆に、感染されてない方は感染防止策をとれば、その間感染されていない状況にある、というふうに考えています。

 

また厚労省の幹部も、大部分の感染は隔離前に起きた可能性があるとする、同様の見解を示している。

 

カナダや豪も乗客を帰国させる予定

 

しかし海外からは、どうもそう見られていない。ご承知のようにアメリカのニューヨークタイムズは先日、日本の隔離処置について「公衆の衛生に関わる危機について、『こうしてはいけない』と教科書に載る見本だ」との専門家の言葉を紹介している。

 

また「ダイヤモンド・プリンセス号」に乗船している外国籍の人々も、すでにSNSなどを使い、困難な隔離生活の様子を伝え、これに応える形でアメリカ政府は17日、希望するアメリカ人約330人を下船させ、チャーター機で本国へと送還。軍の施設などで改めて14日間の隔離期間を設ける措置を施した。

 

またカナダ政府やオーストラリア政府も今後、乗船している自国の国籍及び永住権を持っている乗客と乗員全員をチャーター機で本国に帰国させる予定だという。

 

さらに香港や台湾、韓国なども、自国民を帰国させる予定とされている。まさに今回の日本の隔離措置が、信用されていない状況が露呈した形となってしまった。

 

なぜこんなに感染者が出たのか?

 

しかし一体なぜ、このように船内から多くの感染者が出る事態となったのか?

 

BBCでは、隔離手段がどれだけ有効だったのか、複数の専門家が疑問を示しているとした上で、神戸大学病院感染症内科の岩田健太郎教授の発言を紹介している。

 

岩田教授は18日に災害派遣医療チームとして船内に入ったが、その後YouTubeの動画において、「そもそも常駐しているプロの感染対策の専門家が一人もいない」と指摘。

 

さらに「SARSやエボラなどの病気とも立ち向かってきました。アフリカに居ても中国に居ても怖くなかったわけですが、ダイヤモンド・プリンセスの中はものすごい悲惨な状態で、心の底から怖いと思いました」と述べている。詳しくは下の動画をご覧いただきたい。

 

また米疾病管理予防センター(CDC)も18日に声明を発表し、日本政府の努力を認めつつも、「船内にいる個人への感染を食い止めるのに十分ではなかった可能性がある」と指摘。さらに「乗船している新しい感染者の割合により、リスクが進行していると考えている」と述べている。

 

果たして「ダイヤモンド・プリンセス号」における、日本政府による隔離措置は適切に行われていたのか?今となっては一体何のための隔離だったのか?ただ船内で感染者を増やしただけだったのなら、本末転倒と言えるかもしれない。(了)

 

出典元:BBC:Coronavirus: First passengers disembark from Diamond Princess in Japan(2/19)

出典元:プリンセスクルーズ:新型コロナウイルスへの対応について(2020年2月18日付 10:45)

出典元:厚生労働省:加藤大臣会見概要(新型コロナウイルス感染症について)(2/15)

出典元:CDC:Update on the Diamond Princess Cruise Ship in Japan(2/18)

記事が気に入ったら
Switch Newsをフォローしよう!


Return Top