五ノ井里奈さんへの強制わいせつ事件、英紙が報じた内容とは?
イギリスのメディアが、五ノ井里奈さんへの強制わいせつ事件の裁判結果について取り上げ、日本の状況について報じている。
3人の被告に懲役2年、執行猶予4年
まずは今回の裁判について、事実関係をお伝えする。
福島地裁は12日、元陸上自衛官・五ノ井里奈さんに対する強制わいせつ事件の裁判において、元陸上自衛官の渋谷修太郎被告(31)、関根亮斗被告(29)、木目沢佑輔被告(29)の3人に対し、懲役2年、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。
この事件では、2021年8月、被告の3人が陸上自衛隊の演習場内で五ノ井さんを押し倒し、下半身を押し付けるなどのわいせつな行為に及んだとされている。
2022年10月、3人は直接、五ノ井さんに謝罪をしたが、裁判が始まると一転して無罪を主張。しかし福島地裁の三浦隆昭裁判長は今回、判決において「五ノ井さんの供述は、一貫していて信頼性がある」として、起訴内容を認定した。
一方、3人の被告は懲戒免職(除隊)となるなど、社会的制裁を受けているとして、執行猶予付きの判決を言い渡した。
「被害者にとっては稀な勝利」
英紙「ガーディアン」は、今回の裁判結果について「これは被害者にとっては稀な勝利であり、虐待(ハラスメント)をめぐるタブーへの挑戦とみなされている」とし、次のように報じた。(上述と重なる部分は省略)
2020年の入隊後、執拗な嫌がらせを受けた五ノ井さんは、事件直後の2021年8月に上司に訴えたが、何の対応もされず、昨年6月に自衛隊を除隊することを決意した。
昨年、五ノ井さんはYouTubeで「強制わいせつ」について語り、法廷で加害者を追求し、国際的なニュースの見出しを飾った。
その後の防衛省の調査では、男女を対象としたセクハラやいじめが約1400件(NHKは1325件)も明らかになったが、そのほとんどは報告されていなかったという。
告発を公にするという五ノ井さんの決断は、性暴力に対する声を上げることがタブー視されてきた男性中心の日本で注目を集めた。
また今年の11月には、五ノ井さんがBBCの2023年の「インスピレーションと影響力のある女性」100人のリストに選ばれ、タイム誌の「注目すべき100人」のリストにも選ばれた。
その一方で、五ノ井さんはネット上で激しい中傷にさらされ、一時は5日間も家から出られなかったほど誹謗中傷がひどかったとし、「日本には何か問題がある。人々は加害者ではなく被害者を攻撃している」と述べていた。
英BBCインスピレーションと影響力のある女性100人に選ばれました。
いつか声をあげなくてもいい社会になってほしいです。https://t.co/Rxly9cBpGP pic.twitter.com/mbryxf0Lns— 五ノ井里奈 gonoi rina (@judo_gonoi) November 21, 2023
日本の現状を報道
「ガーディアン」紙は、「五ノ井さんの事件は、中国の軍備増強と北朝鮮の弾道ミサイル、核兵器計画に対する懸念の中で、より多くの女性兵士を採用し自衛隊を強化しようとする日本政府の取り組みと重なった」との見方を示している。
また「日本の政治、ビジネス、軍の分野で権威ある地位に就いている女性はほとんどおらず、男女間の賃金格差は先進国の中で最悪である」とも断じた。
その上で「こうした背景が、性的暴行被害者が名乗り出るのを難しくしている」とし、「日本では性暴力被害は偏見と恥辱をもたらし、被害者が名乗り出るのを躊躇することが多い」とする活動家の言葉を紹介している。(了)
出典元:The Guardian:Rina Gonoi sexual assault: Japan court finds soldiers guilty in landmark case(12/12)