微小重力が人間の生殖を阻害、宇宙植民地化への重大な影響

新たな研究により、微小重力下では人間の生殖が阻害される可能性が指摘され、未来の宇宙植民地化に影響を与えることが示唆された。
ヒトの精子の方向感覚が狂う
3月26日に学術誌「Communications Biology」に掲載された研究論文によれば、研究者らは地球上の模擬微小重力環境下で、ヒトやマウス、ブタの精子と卵子を用いた調査を行ったという。
その結果、微小重力によってヒトの精子の方向感覚が狂い、マウスの卵子の受精率が低下し、ブタの胚の発育が遅れることが明らかになった。
また無重力の状態では、受精の成功が事実上不可能に近いことも示されたそうだ。このことは、宇宙植民地化の未来に重大な影響を与える可能性がある。
センサーの働きが阻害される
オーストラリアにある、アデレード大学ロビンソン研究所の精子・胚生物学グループを率いる研究者で、本研究の筆頭著者であるニコール・マクファーソン氏らは、微小重力をシミュレートするために「clinostat」という装置を使用した。
これは細胞またはサンプルを、複数の方向に連続的に回転させることにより、一種の自由落下を経験させ、宇宙空間の無重力状態に近い環境を再現したという。
そしてヒトとマウスの精子を、女性の生殖器系を模した小さな迷路に挿入。その結果、ヒトとマウスどちらの場合も、地球の重力下に比べて、微小重力下では迷路を無事に通過できた精子の数が少なかったそうだ。
そもそも精子に存在する多くのタンパク質は、物理的な力を感知する「メカノセンサー(mechanosensors)」として働くが、重力がなくなると、これらのセンサーの働きが阻害され、精子の方向感覚や移動能力が損なわれるという。
また地球の重力下では通常、女性の生殖器系が排卵後に「プロゲステロン」というホルモンを分泌し、精子が卵子に向かって移動するのを助ける化学信号を送る。
研究者たちは、研究でもこのホルモンを加えて実験を行い、ある程度、効果は確認されたが、やはり高い濃度が必要だったという。
ブタの胚が発育遅延の兆候
次に研究者らは、マウスとブタの卵子の受精と胚発生を調査。地球の重力下と比較して、模擬微小重力下では、マウスの卵子の受精率が30%、ブタの卵子の受精率が約15%まで低下した。
また受精から6日後、ブタの胚は発育遅延の兆候を示したそうだ。
そもそも受精後、胚は子宮壁に着床する必要があるが、その過程では重力が役割を果たす。
そのため微小重力下では、胚の細胞の組織化や、臓器の形成、胎盤機能の正常化など、さまざまな段階でそれらが阻害される可能性が示された。マクファーソン氏は、次のように述べている。
「精子が旅を始める瞬間から、胚が発達し始める瞬間まで、重力は私たちがようやく解明し始めたばかりの役割を果たしているようです。重力は単なる生命の背景ではなく、生命を生み出す生物学的プロセスに深く根ざしているのです」(了)
出典元:Livescience:Astronauts may struggle to reproduce in outer space, study suggests — what does that mean for the future of space colonization?(3/26)

























