このほど、エジプト政府が「子供は２人で十分」とする、家族計画の新しい取り組みを始めた。

 

同国では人口増加が国内最大の問題の1つとなっており、この取り組みは貧困層を中心に人口を抑制しようとする試みだという。

 

人口増加は国家の脅威

 

エジプトの人口は約9,500万人、毎年260万人ずつ人口が増えており、１億人を超えるのは時間の問題だと言われている。

 

人口増加が国にもたらす影響は大きく、水資源や仕事の不足、また病院や学校が過密状態になり、市民生活へのサービスの質が低下することが懸念されている。

 

国家にとって脅威は２つあり、それはテロリズムと人口増加だとシーシ大統領（Abdel Fattah El-Sisi）は指摘し、国民が恩恵を受けられるようにする為に、人口増加をコントロールする必要があると述べた。

 

そこで今回始まったのが、「子供は２人で十分」とする家族計画キャンペーンだ。

 

キャンペーンは主に低所得家庭を対象に実施

 

このキャンペーンは2年の期間で、およそ110万以上の低所得家庭を対象に行われるという。

 

社会連帯省と、地元のNGOにより訓練を受けたボランティアが家庭を訪問し、子供を増やさないよう働きかけるそうだ。

 

また政府は、今年3月までに70の診療所を開設する目標で、母親を対象としたセミナーの開催や、アドバイザーが家族計画について相談に応じる予定とのこと。

 

エジプトでは過去にもアメリカの支援を受けて家族計画プログラムを実施してきた。避妊具（薬）の普及により、1976年に5.6人だった出生率は、2008年には3.0人にまで減少した。

 

しかし、支援額の減少により出生率は増加。2014年には3.5人と増えてしまったという。

 

エジプト政府は、今回の「子供は２人で充分」キャンペーンに、427万ドル（約４億4000万円）を費やす計画だとしている。

 

伝統的な考えが根付く農村地域の人々

 

しかし、国民の反応は、政府の思惑通りとはいかないようだ。

 

特に、古くからの風習が根強く残る農村地域では、子供はたくさんいる方がよいと考える人たちが多い。

 

３人の娘を持つある母親は、医者から次の妊娠は難しいと言われているにも関わらず、４人目を望んでいる。息子が欲しいのだという。

 

「将来、息子は家族を支えてくれるので、どうしても息子が欲しいのです。」

 

「また、父親の名前を継ぐためにも、息子が必要です。」

 

人々の意識改革が鍵

 

伝統的な考え方に加え、避妊に対する知識が乏しいことも出産率の増加に繋がっていると指摘されている。

 

国連人口基金（UNFPA）によると、避妊薬を使用し始めた女性の約３分の１が、１年以内に使用を中止しているという。その理由として、副作用の誤った情報や、他の避妊方法の知識を持っていないことなどが挙げられている。

 

キャンペーンを担当する社会連帯省のRanda Fares氏は次のように話している。

 

「当キャンペーンで我々が挑戦するのは、人々の意識改革なのです。人の考えを変えるのは難しいことです。」

 

イスラムの教えでも家族計画は許されていることを説くセミナーを開催したり、野外広告の看板やテレビのCMで小家族を取り上げ宣伝したりと、あの手この手の策を講じているという。

 

政府は2030年までに出生率を3.5人から2.4人に引き下げたいとしている。

 

人口増加は地球規模での問題

 

一方、日本では少子化が問題となっているので、エジプトのように人口を抑制するという話は実感が無いかもしれない。

 

筆者も過去に、国際理解教育に携わり、学校で世界情勢について話をすることがあった。限界集落の一学年５名という小学校で、世界人口増加の問題を説明した時の、彼らのポカンとした顔が忘れられない。

 

しかし、世界全体でみれば人口は年々増加しており、資源不足など様々な問題が生じているのが現状だ。

 

 

国連の「世界人口白書」によると、世界人口は2011年に70憶人を超え、2050年には93億人に達すると見込まれている。

 

人口増加の約97％は開発途上国に集中しているという。エジプトの家族計画キャンペーンが功を奏するのか、宇宙船地球号の一員として、私たちも他人事ではないという意識を持ち、注視していきたい。（了）

 

 

出典元：Arab News：‘Two is Enough,’ Egypt tells poor families as population booms (2/21)

出典元：なんとかしなきゃ！プロジェクト：世界人口70億人突破！「人口増えすぎ問題」を考える

出典元：ECORACY：人口爆発のホント。発展途上国の人口爆発の原因と先進国がやるべきこと (2016/4/4)