座席は翼内に!従来よりも燃費の良い“V字型”飛行機の開発にKLMオランダ航空が出資
オランダを代表する航空会社であるKLMオランダ航空が、従来型よりも燃費の良い“V字型”の航空機の開発に向け資金提供を行うと発表し、注目を集めている。
特徴的な“V字型”の外観、客席等は翼に!
KLMオランダ航空が開発に向け出資すると発表したのは、V字型の外観が特徴的な航空機、その名も“Flying-V”だ。
Flying-Vは、当時ドイツのベルリン工科大学に所属する学生であったJustus Benad氏が発案したもの。その後オランダのデルフト工科大学の研究者らにより、開発が行われていた。
同機においては客席やタンク、貨物室は翼の部分に設置されることになるという。
客席数は従来と変わらぬまま燃料消費は20%カット
Flying-Vが従来型の航空機と異なるのは、その近未来的ともいえる特徴的な外観だけではない。
同機はエアバス社が手掛けるエアバスA350-900と比較し、燃料消費が20%程度少なくすむとのこと。
その一方で座席数は314席と、300から350もの座席を有するエアバス350とほぼ同数の収容人数を誇り、従来よりも少ない燃料消費で効率的な運航を行うことが可能となる。
このような燃料の効率化を可能としたのは、空気力学を応用した空気抵抗の少ないV字型のデザインであり、機体の重量も同機においては従来と比較して軽量になるとのことだ。
Flying-Vにおいては両翼の端から端までの長さも65メートルとなり、エアバスA350のものと一致する。これにより従来のゲートや搭乗口、格納庫といった空港設備をそのまま利用しながらでの導入が可能になっているという。
近未来型航空機開発の背景には持続可能性への懸念
このFlying-V開発の目的としては、空の旅における持続可能性を高めることにある。
デルフト工科大学におけるFlying-V開発のプロジェクトリーダーを務めるRoelof Vos氏は、航空産業が世界における二酸化炭素排出量の2.5%程度をも担っておりながら、業界自体は成長を続けていることを指摘。
「我々はより持続可能性の高い航空機に、真剣に目を向ける必要がある」としている。
今回、この開発に資金提供を行うと発表したKLMオランダ航空のCEO、Pieter Elbers氏もこれについて、近年KLMが航空産業界で持続可能性のパイオニアとして発展してきたことを前置きしつつ、コメントを発表。
“我々は、デルフト工科大学との先進的な協力関係を誇りに思います。同大学はKLMの戦略とも合致し、持続可能性のある航空産業へのスケールアップを目指す上で、重要で画期的な役割を果たしています”と述べている。
一方、航空業界における持続可能性への取り組みとしては、電気航空機の開発も挙げられる。
しかしこれについてVos氏は、航空機を電動化させると機体の重量が非常に重くなってしまうという問題点を指摘する。
30年以内に大西洋を電気航空機で飛ぶことは出来ないなどとし、従来通りの燃料を利用しながらも、消費量を低減させることを可能とする航空機の開発を目指すことが必要だ、と説いた。
Vos氏によると、9月には縮小されたモデルでFlying-Vの飛行実験を行いたいとのこと。
原寸大の模型についてはオランダのアムステルダム・スキポール空港で10月、KLMオランダ航空100周年記念の一環として、一般に公開されることになるという。
ただ実際に就航が開始されることとなるのは、2040年から2050年の間になると予想されている。
V字型の斬新な形状が目を惹くFlying-V。実際に就航するのはまだ先のことといえど、その完成を気長に待ちたいところだ。(了)
出典:CNN:KLM to fund development of fuel-efficient Flying-V plane (6/4)
出典:Business Insider :One of Europe’s flagship airlines is working on a fuel-efficient, V-shaped plane that seats passengers in its wings(6/4)