新型コロナの感染を制御している遺伝子を発見:米研究
新型コロナウイルスの感染と戦う役割を果たす遺伝子が発見され、その研究結果が4月13日に科学誌「Molecular Cell」において発表された。
インターフェロンの反応が弱いと重症化する
この研究を行ったのは、アメリカ・カリフォルニア州にある「サンフォード・バーナム・プレビーズ・メディカル・ディスカバリー研究所」のSumit K. Chanda教授が率いる研究チームだ。
彼らは、新型コロナのパンデミックが始まった頃から、SARS-CoV-2の感染に対するインターフェロンの弱い反応が、重症化のケースになりやすいことを突き止めていたという。
インターフェロンとは、病原体など異物の侵入に反応して細胞が分泌するタンパク質の一種とされ、Chanda教授らはインターフェロンによって触発され、SARS-CoV-2の感染を制限する人間の遺伝子、「ISGs(interferon-stimulated genes)」を探し始めたそうだ。
.@thechandalab has identified interferon stimulating genes that control SARS-COV-2 replication. “We wanted to get a better understanding of the cellular response to the virus, including what drives a strong or weak response.” #COVID19 #FromResearch https://t.co/DRQSIqwgjl pic.twitter.com/MRcqtVFfLW
— Sanford Burnham Prebys Medical Discovery Institute (@SBPdiscovery) April 16, 2021
感染を制御する鍵を発見
研究者たちは2002年から2004年に流行したSARS(SARS-CoV-1)から得られた知識をもとに、COVID-19のウイルス複製を制御する「ISGs」を特定するための実験を展開したという
その結果、ウイルスが細胞に侵入する能力を抑制させるものや、ウイルスの生命線であるRNAの生産を抑えるもの、ウイルスの組み立てを抑制する遺伝子群などを含む、感染を制御する65個の「ISGs」を特定。
またSARSや新型コロナ両方を抑制する8個の「ISGs」が、タンパク質のパッケージングを行う細胞内に存在することを確認したそうだ。今回の研究論文の筆頭著者であるLaura Martin-Sancho博士は次にように語っている。
「このことは、この脆弱な部位を利用してウイルス感染を除去できる可能性を示唆しています。これは重要な情報ですが、私たちはまだ、ウイルスの生物学についてもっと詳しく知り、これらのISG内の遺伝子変異がCOVID-19の重症度と相関しているかどうかを調べる必要があります」
また次のステップとして、研究者たちは新型コロナの変異株に注目。Chanda教授らは、すでに実験室での調査のために変異株の収集を開始しているという。(了)
出典元:Sanford Burnham Prebys:COVID-19: Scientists identify human genes that fight infection(4/16)