南極のアデリーペンギンの繁殖が壊滅的、数千羽のヒナが餓死、生き伸びたのは2羽のみ
南極に生息するアデリーペンギンのヒナが、壊滅的な状況に陥っていたことが調査で明らかにされた。
氷の増加で親が長い距離を移動
その出来事が確認されたのは南極東部。そこにはこれまで、約4万羽のアデリーペンギンの群れが確認されてきたという。
しかしフランスの研究者が1万8000羽のペンギンについて調査したところ、繁殖期の後に数千羽のヒナの死骸や孵化していない卵を発見。今年の初めまでに生き残ったのは、わずか2羽しかいなかったそうだ。
研究者によればこのような被害が発生したのは、大量に降った雨によって広範囲にまで氷が広がったことにあるという。
これによりペンギンの親たちは、子供たちにエサを与えるためより遠くまで移動しなければならず、その結果ヒナたちはエサを食べられず、乾燥や暖かさも得ることが難しくなり、大量に死んだと考えられている。
今回のような壊滅的な被害はこの4年間で2度目とされ、2013年に起きた際には生き残ったヒナは1羽もいなかったという。
減少の原因は気候変動以外にも
近年、南極の氷は減少傾向にあったが、このエリアは例外で、2010年にメルツ氷河(氷舌)から氷山が分離したことで、営巣地に面した海の環境が変わったと考えられている。
調査を行ったヤン・ロペールクデール氏は、取材に対し次のように語っている。
「メルツ氷河の影響は2010年から始まっています。大きな天候の変異によって引き起こされた気象学的な出来事が、ここ数年間この地域を直撃し、これが壊滅的な繁殖の失敗に導いたのです。言い換えれば繁殖がうまくいくようになるまでに、また群れにとって環境が良い状態になるまでには、まだ数年はかかるかもしれません」
またロペールクデール氏によれば、海氷の増加はさまざまな種に対してネガティブなインパクトを与え、動物たちが生き残るには適度な氷に覆われる必要があるという。
無論、今回の事態は気候変動によってもたらされたと考えられているが、それ以外にも漁業やツーリズムなどもアデリーペンギンの減少に影響を与えており、研究者の中には絶滅の危険があると見る人もいるそうだ。
また研究者らは今回のヒナの大量死を受け、南極東部において海洋生物の保護エリアを創設することを求めていると言われている。(了)
出典元:NYPost:Only two chicks survived this penguin colony’s breeding season(10/13)