なぜこんなことに?カモの赤ちゃんを育てるフクロウの姿が話題に
猫や犬などペットとして飼われている動物が、異種間で友情を育むというのはしばしば見受けられる光景だ。
しかし野生ともなれば、事はそう簡単ではない…と思いきや、カモのヒナを育てるフクロウの姿が撮影され、海外で話題となっている。
巣箱を見ると、カモの子が…
カモのヒナを育てるフクロウの姿を発見したのは、野生動物の写真を得意とする写真家のLaurie Wolfさん。
彼女がこの奇妙な光景に気付いたのは、米国フロリダ州ジュピターに位置する自宅の裏庭でのこと。
Wolfさん宅の裏庭には巣箱が設置されており、1カ月ほど前からその中にフクロウが住み着いていたという。
しかしその後、ふわふわとした生き物が巣箱の中で動いていることに気付き、Wolfさんはフクロウが子育てを始めたのだと思ったという。
ところが嵐が近付いていたある日のこと、Wolfさんは巣箱の中から顔を覗かせた、フクロウの子供と思い込んでいたものの“正体”を目撃することとなる。
なんとフクロウの横にいたのは、カモのヒナだったのだ。
ヒナの危険を感じ捕獲を試みるも…
この光景を見たWolfさんは“信じられない”と驚愕。
肉食であるフクロウがカモのヒナを食べてしまうのではないかと心配し、猛禽類の専門家に連絡をとる。
結果、専門家もカモのヒナが捕食されてしまう危険にあることを認め、地元の野生動物保護区のスタッフもヒナを捕まえることを試みることに同意したという。
ところがWolfさんとその夫が捕獲を試みようとしていたところ、ヒナは巣箱から飛び降り近くの池へと一直線に向かって行ってしまい、以来ヒナの姿は目撃されていないとのことだ。
この出来事について、Wolfさんは「私の人生において、このようなことを再び経験することはもうないでしょう」としている。
フクロウが3羽のカモを孵化させた事例も
このようにフクロウがカモのヒナを育てるというケースが報告されるのは、今回が初めてのことではない。
鳥類の保護を行う機関「Bird Studies Canada」のChristian Artuso氏は、「このようなことは通常記録されることではないが、確実に起きている」とする。
2005年には、今回ヒナを育てたのと同種のフクロウであるアメリカオオコノハズクが、やはり同じアメリカオシドリのヒナを3羽も孵化させることに成功した事例があるという。
このようなことが起きる理由とは?
しかし、一体なぜこのようなことが起きるのだろうか。
これにはアメリカオシドリに見られる習性が関係している。
カッコウをはじめとする一部の鳥には“托卵”という、他の鳥類の巣に自らの卵を産み落とし、巣立ちまで世話をさせるという独特の習性がある。
これは自らの卵を拡散させることで、捕食者によって一つの巣にある卵の全てが食べられてしまうことを防ぎ、より高い確率で遺伝子を後世へと残すためのものであるとされている。
アメリカオシドリもこの托卵の習性を持っており、そのためフクロウの巣に自らの卵を産み付け、このようなことが起きてしまったとみられている。
ただ托卵の際には他のアメリカオシドリの巣か、近い種の鳥類の巣に卵を産むことが通常だという。
またArtuso氏によると、托卵によって他の種の鳥類に育てられるヒナがどれほどいるのかは、わかっていないとのことだ。
フクロウが、カモのヒナを育てるというなんとも珍しい現象。しかし自分の子供だと思っていたヒナがそうではなく、早々に自らの下を去ってしまったことを考えると、“育ての親”であるフクロウがちょっと気の毒な気もする。(了)
出典:National Geographic:Why this owl raised a duckling as its own(4/16)