近年、薬に対する真菌の耐性が強まっている、英の研究者らが警鐘を鳴らす
イギリス科学者らは従来の薬に対する真菌の耐性が強まっており、病気の感染拡大に繋がる恐れがあるとして警鐘を鳴らしている。
薬に対する真菌の抵抗力が高まる
そう主張するのは、イギリスのImperial College LondonやExeter大学が率いた、国際的な研究チーム。彼らはこの調査結果を5月18日に、科学誌「Science」において発表した。
それによれば、過去30年から40年に渡って、真菌の抗真菌薬への抵抗力が強まっているという。
この場合、免疫システムが感染に対して戦えないため、特に集中治療や移植手術を受けた患者や、ガンの治療を受けている人には大きなリスクになるそうだ。
またこの真菌感染は、他の感染症の中でも最も死亡率が高いため、今後緊急に新たな治療法が必要だと警鐘を鳴らしている。
真菌とは?
真菌は一般的には「カビ」「酵母」と呼ばれており、これらによって引き起こされる感染症を真菌感染症(真菌症)という。
また真菌は、非常に小さな胞子をまき散らして繁殖し、胞子は空気中や土壌中など至るところに存在するため、人が呼吸をして体内に吸い込まれたり、皮膚と接触したりするという。
そのため真菌感染症は通常、肺や皮膚から始まるが、人に感染するのはごく一部にしかすぎない。ただわずかな種類の真菌は、免疫系が低下している人に感染症を引き起こす場合があるそうだ。
耐性を持った原因は散布された農薬か
Imperial College LondonのMatthew Fisher教授によれば、真菌が薬に対して耐性を持った理由は、恐らく農家が患者に使われるのと同じ薬を、穀物に散布しているからではないかという。
病院と畑とで薬が二重に使われることで偶然生まれた副産物が、健康ではない人に処方される薬を機能させなくなった、と考えているそうだ。
そして教授は、真菌感染のリスクを抱える人の数は、HIV患者や高齢者、入院患者の増加と同時に急速に増えている、と語っている。
新たな治療法を見つけるべき
さらにFisher教授によれば、このような感染との戦いにおける「世界的な崩壊」を避けるためにも、今の薬がどのように使われているのかという点や、新しい治療法の発見に着目するという点においても、改善が必要とされているという。
また英国医学研究審議会のGordon Brown教授は、すでに新しい複数の薬に耐性(多剤耐性)を持っている「Candida auris(カンジダauris)」という真菌の存在を指摘。
これらが世界中の病院における侵襲的な真菌感染の割合を増加させている原因と見られ、それに対しては現在、ほとんど治療法がない状態だとしている。(了)
出典元:BBC:Growing resistance to antifungal drugs ‘a global issue’(5/18)
出典元:University of Exeter:Resistance to antifungal drugs could lead to disease and global food shortages(5/18)
出典元:MSDマニュアル家庭版:真菌感染症の概要
参考:Y’s Square:Candida aurisについて