米で開発されたジェル状の男性用避妊薬、効果や安全性を確認する研究が進む
米国立衛生研究所(NIH)が、男性用の避妊薬の研究に資金を投じているとして、注目が集まっている。
皮膚を通して体に成分が浸透する
NIHは現在、子供を望まない夫婦に避妊の新しい選択肢を与える目的として、ジェル状の男性用避妊薬の効果を確かめる研究を支援しているという。
そのジェル状の薬は局所的に塗るもので、深刻な健康問題に直面する人々を支援する非営利団体「Population Council」と「米国立小児保健発達研究所避妊具開発プログラム(National Institute of Child Health and Human Development Contraceptive Development Program:NICHD)」によってすでに開発されているそうだ。
このジェルは「NES/T」と呼ばれ、テストステロンと組み合わさって作用する「プロゲスチン」化合物の「セジェステロン・アセテート(Nestorone)」が含まれているとか。
使い方は肩や背中にこれを塗布するだけ。これにより皮膚を通して薬の成分が体に浸透し、精巣の中での自然なテストステロンの生産をブロックし、精子の生産を減らして、存在しないまでの状態になると言われている。
男性の避妊方法は未だに限られる
現代ではさまざまな避妊法があるが、その改良については主にホルモン調整や子宮内避妊リングなど女性用の薬や避妊具に焦点が当てられてきたという。
それに比べて男性の避妊法には、未だに2つの選択肢、つまりコンドームの使用か、もしくは精管切除を行う方法など限られた選択肢しかなかったそうだ。
このため新しい男性用の避妊薬が利用できるようになれば、新しい選択肢が増えることになり、女性への負担も軽減する可能性もある。
1000万人の女性がピルを服用
実際、米疾病管理予防センターはアメリカで1000万人の女性がピルを服用していると見積もっており、一方他の調査では男性がコンドームを使う割合は低いという。
ピルは自然に作られるエステロゲンやプロゲスチンといったホルモンを解放することにより、卵子への精子の着床をしにくい状態にしたり、子宮頸管粘液に変化を及ぼして精子の子宮への進入を妨げたりするとされている。
しかし毎日決まった時間に飲まなければならなかったり、薬が合わなければ人によっては副作用が出たりする場合もあるそうだ。
ただ今回のジェル状の避妊薬にも、疑問や問題点が存在するようだ。ABC Newsの医療分野担当Jennifer Ashton博士は、次のように疑問を呈している。
「このジェルの男性の肩や背中への塗布は、男性自身が行うようですが、肉体的またはロジスティック的な見地から潜在的に問題があるように見えます。一体だれがホルモンを確実に経皮浸透させるために、男性の背中や肩にどうやって塗るのでしょうか?」
「また、もし女性が男性に塗るとしたら、彼女はこれらのホルモンを吸収するかもしれません。それは女性的機能に影響を及ぼす可能性があります」
研究のために420組のカップルを募集
研究者は420組のカップルに登録してもらうことを計画しており、副作用が出ないかを調べるため、男性には4週間から12週間、毎日ジェルを塗ってもらう予定だという。
そしてもし12週間までに精子レベルが減少しなかった場合は、16週間まで使用を続ける予定で、十分に精子の減少が確認されれば、さらに52週間のトライアルに入り、その結果からジェルの使用を停止するか最終的に判断するそうだ。
現在、NIHは開発されたジェルの研究を支援し、効果が認められるか、または薬が新たな避妊の選択肢になりうるかを見極めているという。(了)
出典元:ABC News:This male birth control comes as a topical gel and will be tested in a clinical trial(11/28)