カブトムシのメスに角が生えた!性差が現れる時期を特定:基礎生物学研究所
カブトムシのオスには立派な角があるが、これが生える時期や、性を決める遺伝子などを日本の研究者らが特定し、その論文が「PLOS Genetics」において発表された。
角に性差をもたらす遺伝子が働く時期が不明
この研究を行ったのは基礎生物学研究所、進化発生研究部門の森田慎一研究員と新美輝幸教授らのグループを中心とし、国立遺伝学研究所の前野哲輝技術職員、基礎生物学研究所の重信秀治教授からなる共同研究チーム。
そもそもカブトムシのオスは立派な角を持つが、これは幼虫と蛹の間の『前蛹』と呼ばれる時期に、初めて角原基 (成虫の角のもととなる幼虫期の細胞群)として形成され、性差が現れるという。
しかし前蛹期間の角原基の形成過程において、角に性差をもたらす遺伝子が働く時期や、タイミングは全く不明だったそうだ。
というのもこの時期にカブトムシの幼虫は土中で生活するため、正確な前蛹開始期の特定が困難だったからだ。
前蛹から36時間で性差が認められる
そこで今回、研究者らはカブトムシの幼虫を、土ではなくプラスチック試験管内で飼育し、タイムラプス撮影法を用いて観察する方法を開発。この結果、まず前蛹期の開始に特徴的な行動として「首振り行動」を発見することに成功したという。
これにより、前蛹開始期を特定することが初めて可能となり、詳細なカブトムシの前蛹期間 (メスでは 129 ± 4.3 時間、オスでは 131 ± 4.7 時間) が判明。
またこの前蛹開始期を0時間として、12時間ごとに120時間までの雌雄の角原基を幼虫から摘出し、形態的な角原基の比較を行ったところ、前蛹36時間にて角原基に雌雄差が認められたそうだ。
このため角の性差をもたらす遺伝子が働くタイミングは、少なくとも前蛹 36時間よりも前であることが推測されるとか。
特定した遺伝子を阻害後、メスに角が生えた
さらにカブトムシの性決定のスイッチとなる、遺伝子を特定する作業を実施。その結果、トランスフォーマー遺伝子が、カブトムシにおいても性を決める役割を果たしていることが分かったという。
実際、幼虫のトランスフォーマー遺伝子の機能を抑制すると、メス化が阻害され、オスと同様の角が形成されたそうだ。
また前蛹開始の7時間前にこの遺伝子の機能を阻害したメス個体において、オスと同様の角が形成されたことから、角の性差をもたらす遺伝子が働くタイミングは、前蛹開始の29時間後 (-7時間+36時間) であることが明らかとなる。
研究者によれば今回の成果は、カブトムシの角の獲得機構や進化過程の解明に繋がることが大いに期待されるという。(了)
出典元:基礎生物学研究所:カブトムシの角(ツノ)にオスとメスとの違いが現れる時期の特定に成功(4/11)