両手を使わず片手でこなせる!6本指を持つ人々の驚くべき能力が明らかに:独研究報告
足や手の指が6本以上ある多指症。このような人々を対象にした研究が初めて行われ、その驚くべき能力が明らかとなった。
多指症の人々の能力を初めて調査
この調査を行ったのはドイツのフライブルク大学(アルベルト・ルートヴィヒ大学フライブルク)、イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドン、スイスのローザンヌ大学病院、そしてスイス連邦工科大学の研究者たちだ。
彼らは今回初めて、多指症の人々の運動技能や、感覚運動をつかさどる脳内のエリアを調査したという。
この結果、多指症の人々は5本指の人が通常2つの手を使わねばならない作業も、片手でこなしていることを発見。
またこれらの運動能力の増大が、脳内の感覚運動野にある特定のエリアのよって可能になっていることが明らかとなり、その結果を「Nature Communications」において発表した。
6本目が親指と人差し指の間にある
今回、研究者が調査を行ったのは、6本の指を持つ人々の運動能力。2人の被験者は皆、親指と人差し指の間に、もう1つの指が完全な状態で形成されていたという。
フライブルク大学のCarsten Mehringfrom教授(博士)は、「被験者らが5本指を持っている人を超える運動技能を持っているか、またはどのように脳が追加された自由度をコントロールできるのかを、知りたいと思ったのです」と語っている。
彼らの能力の範囲を調べるために、研究者は多指症の被験者に複数の行動実験をしてもらい、同時にfMRI(機能核磁気共鳴断層装置)を使い脳の特定エリアの活動をモニターしたそうだ。
この結果、被験者の6本目の指はそれ自身の筋肉で動いていることが判明。これにより被験者が6本目を他の指の中でも、できる限り独立的に動かせることも明らかになったという。
両手を必要とする作業を片手で処理
この実験では6本目の指がもう1つの親指と同じように動くように設定され、多彩な動きを可能にしていたとした上で、Mehringfrom教授は次のように語っている。
「例えば私たちの実験において、被験者はある作業を片方の手でこなせます。ただ(その作業を行うには)私たちは通常、2つの手を必要とします」
またインペリアル・カレッジ・ロンドンのEtienne Burdet教授(博士)も「余分な指によって脳がコントロールしなければならない自由度の領域(数)が増加しているにもかかわらず、5本指の人々に比べて不利益を被っていないことも分かりました。要するに他の部分を犠牲にせずに、それを行える十分な能力を脳が持っていることは、驚くべきことです」と述べている。
6本目の指に関わる神経領域も発見
さらにfMRIを使い、多指症の被験者の脳が、どのように追加された指をコントロールしているかを調べた結果、研究者らは6本目の指を動かすのに積極的にかかわっている神経領域を発見したという。
そして脳の体性感覚野(体の内部の感覚)や運動皮質が、追加された運動技能を可能とするよう、正確に組織化されていたことも明らかになったそうだ。
これらの研究は、通常の人間に追加されるもう1つの腕のような、義手(義肢)の開発に役立つ可能性があるとしている。(了)
出典元:UNI Freiburg:Six fingers per hand(6/3)