太るのは人類の宿命?!新たな研究で人間のDNAと肥満との関連が明らかに
ダイエットに励む人の多くは、己を顧みつつ太ってしまう原因となった習慣を改善させることで、スリムな体形を手に入れようと努力しているのではないだろうか。
しかしそんな人にとって悲報かもしれない。
新たな研究により、我々人類の肥満はDNAによって宿命づけられているかもしれないことが明らかとなったのだ。
人類はDNA上脂肪が溜まりやすい?
この新たな研究を報告したのは、米国ノースカロライナ州のデューク大学に所属する研究者ら。
研究においては、異なる種の霊長類における脂肪組織を分析。
すると脂肪の容易な燃焼を妨げる僅かな違いが、異なる種間の細胞内におけるDNAの在り方に認められることが明らかとなったという。
さらに人類の脂肪細胞においては、より人類に近い種であるチンパンジー、さらにはニホンザルを含む“マカク”と呼ばれるサル等とは異なり、カロリーを変質させる一連の遺伝子が容易に作用しないことまでもが判明。
それらの結果、脂肪を燃焼させることの出来る活動を行っていたとしても、脂肪細胞に脂質が溜まりやすくなってしまい、人類においてはなかなか脂肪を落とすことが出来なくなってしまっているようだ。
キーとなるのは“褐色脂肪組織”と“白色脂肪組織”
この研究において明らかとなったように、人類が他の霊長類と比べ太りやすいというのは、何も今に始まったことではない。
自然界に生きる他の霊長類においては9%以下の体脂肪率を持つことが一般的であるのに対し、健康的な人類の体脂肪率は14%から31%ほどと、なんとその3倍以上にも達することが度々だ。
一方、人類とチンパンジーは98%ものDNAを共有。遺伝子上での違いは、僅か2%に留まることも判明している。
しかしそれではこのたった2%のDNA上の違いは、人類とチンパンジー双方の脂肪の付き方にどのような影響をもたらしているというのだろうか。
これに関してキーとなるのが、“褐色脂肪組織”と“白色脂肪組織”の存在だ。
この“褐色脂肪組織”とは、カロリーを燃焼する役割を果たし、身体を暖かく保つことに貢献する。
対して“白色脂肪組織”とは、ステーキでいえば“霜降り”の部分に当たるもの。人でいえばウェスト周り等に付き、カロリーを溜め込む役割を持つものだ。
ところがこの白色脂肪組織が褐色脂肪組織へと変わるのを助ける役割を担うはずのゲノム領域は、人においては基本的に作用していない。
これについて同研究に携わったデューク大学の生物学者Devi Swain-Lenz氏は、「我々は太った霊長類だ」などとしている。
人間に脂肪が多いのは脳が大きいため?
しかし人とその他霊長類等におけるこのような違いは、なぜ生まれることとなったのだろうか。
脂肪は人や霊長類等において、内臓にかかる衝撃を和らげるためのクッションや、寒さや飢えをしのぐための役割を果たす。
ところが初期の人類において、脂肪は別の機能をも果たしていた可能性が考えられている。それが脳のエネルギーとして蓄えられた可能性だ。
人類とチンパンジーが数百万年もの間別の種として進化を果たしてきた中、今や人間の脳はチンパンジーの3倍ほどの大きさにまで至っており、その脳の大きさの違いが両者における脂肪の付き方にまで差異を生み出したというわけだ。
一方、褐色脂肪組織がカロリーを燃焼する役割を果たすのであれば、気になるのはこれを増やすことでダイエットに活かすことが出来ないのかということではないだろうか。
しかしこれについてSwain-Lenz氏は、将来的には白色脂肪組織を褐色脂肪組織へと変えるのに貢献する、あるいは妨げとなるような遺伝子を発見することが出来るかもしれない一方、それにはまだほど遠いと指摘する。
「それがスイッチを入れたり切ったりするのと同じくらい簡単なことであるとは考えにくい。もしそうであれば、我々は遥か昔に発見していただろう」
脂肪が付きやすいというのは、遺伝子上定められた人の特性であったという残念過ぎるニュース。体重に悩む人はダイエットに励みつつ、さらなる研究の進展を待つしかなさそうだ。(了)
出典:ScienceAlert:Buried Genes Could Help Explain Why Humans Are The ‘Fat Primate’ (6/27)
出典:Futurity: Research News:DNA changes made us ‘the fat primates’ (7/2)
出典:Medical News Today:New research may explain why evolution made humans ‘fat’(7/6)
出典:DiscoverMagazine.com:The 2% Difference(2006/4/4)