【新型コロナ】血液中に「スーパー抗体」を持つ男性、感染者の5%未満
新型コロナウイルスに対する強力な抗体を持つアメリカ人男性の存在が明らかにされ、その血液が今後の研究に生かされるという。
同室だった友人が新型コロナに感染
その男性とは、バージニア州にあるジョージメイソン大学でコミュニケーションマネージャーをしているJohn Hollisさん(54)だ。
彼は昨年の春、息子のDavis君と共にヨーロッパへ旅行し、帰国してアメリカに飛行機が着陸する前に鼻づまりとなったが、すぐに症状は回復したという。これは毎年この時期に訪れる通常の鼻腔炎と考えられたそうだ。
しかしその後、4月の初めにHollisさんの同居人だった友人が、新型コロナに感染していることが判明。友人は症状が重く、Hollisさん自身も感染するかもしれないという不安にかられたそうだ。
さらに息子のDavis君も旅行で感染したかもしれず、Hollisさんは自分も感染して死に、大人になった息子の姿を見られないかもしれないと悲観的になったそうだ。
だがHollisさんは結局、新型コロナを発症することもなかったため、感染を免れたと考えていたという。
Always considered shaving my head and going completely bald, so I figured our current situation was as good a time as any to try a new look. pic.twitter.com/9yZytsrlpw
— John Hollis (@jdhollis123) April 7, 2020
1万倍に薄めても耐性がある
彼はその後、知らないうちに新型コロナに感染していたことを知る。7月中旬、HollisさんはGeorge Mason大学での新型コロナ研究に参加。この研究は国立衛生研究所の元副所長で、同大学のLance Liotta博士によって率いられた。
そして血液検査を受けた際、Hollisさんは3月末に新型コロナに感染していたことが判明。しかし同時にLiotta博士から、新型コロナに対して非常に強い抗体を持っていることを知らされたという。
これはウイルスを中和する「スーパー抗体」と呼ばれ、1万倍に希釈しても、新型コロナウイルスに耐性があるという。
しかもこの「スーパー抗体」を持つ人は、新型コロナに感染した人の5%未満しかいないそうだ。
It was great meeting up on Friday with George Mason University’s Dr. Thomas Lovejoy, the noted conservation biologist who is considered the Godfather of Biodiversity. Dr. Lovejoy first coined the term biodiversity. pic.twitter.com/9TmegWV7NL
— John Hollis (@jdhollis123) November 3, 2019
9カ月後も90%の強度を維持
昨年8月以降、Hollisさんは実験のために、約2週間ごとに血液と唾液のサンプルを提供。 その結果、Liotta博士は、Hollisさんの抗体のレベルが持続しただけでなく、コロナウイルスの6つの異なる株を殺すのに効果的であることを確認したという。
さらにLiotta博士のチームは、臨床試験のために「スーパー抗体」を持っている他の7人を発見。ただしHollisさんの抗体は他のとは異なり、新型コロナに感染してから9カ月後に抗体の強度が少なくとも90%維持されていたそうだ。ちなみにほとんどの抗体は60日から90日で消えると言われている。
Liotta博士によれば、通常抗体はウイルスのスパイクに付着して、人間の細胞に侵入させないようにし、感染を防ぐのだが、Hollisさんの抗体はそれとは異なり、ウイルスの複数個所を攻撃し、素早く除去するという。
そしてHollisさんの血液にある抗体(免疫系がバクテリアやウイルスを識別して戦うために使用する血液中のY字型タンパク質)を使うことで、新型コロナを殺す方法や、多くの人を保護する抗体の生産、そしてより良い薬やワクチンの開発に繋がる可能性があると言われている。(了)
出典元:NBC:He unknowingly had Covid-19. Now his blood contains rare antibodies.(1/14)
出典元:BBC:Covid: The man with ‘super antibodies’(3/11)