アメリカの大学が、実際に新型コロナウイルスで亡くなった人数を計算し、公式発表よりも多くの死者がいる可能性を明らかにした。

 

米・ワシントン大学の研究

 

その調査を行ったのは、ワシントン大学の健康指標評価研究所の研究者たちだ。

 

彼らは2020年3月から2021年5月3日までの、世界各国における超過死亡者数を調査。

 

これと例年に予想される死亡者数を比較した後、パンデミックに関連するいくつかの要因を考慮して数値を調整し、SARS-CoV-2ウイルスが直接の原因となった死亡者数のみを推定したという。

 

その結果、新型コロナにより世界で亡くなった人の数は、公表されている人数よりもかなり多い結果となったそうだ。

 

日本は10倍、アメリカでも57％多い可能性

 

まずは公式に発表されている世界で亡くなった人数は324万人だが、今回の調査では2倍以上となる約700万人と推定されたという。

 

またインドやメキシコ、ロシアなどは、公式発表された犠牲者の数が、今回の結果より約40万人も少なかったそうだ。つまり実際は、40万人多く亡くなっている可能性がある。

 

日本やエジプト、いくつかの中央アジアの国々も、公式に発表された数値よりも多く、実際は約10倍以上の死亡者がいると推定された。下の表では、日本で公式に発表されている死亡者数は1万390人。今回の推定値では、10万8320人となっている。

 

さらにアメリカでは、実際に亡くなった人は、公表されている数（約57万人）より57％高い、90万人以上という結論が導き出された。

具体的な調査方法とは？

 

この調査を行うにあたり研究者はまず、さまざまな国で発表されている公式の統計データや、他の地域の学術的なデータなど、あらゆる資料に基づいて超過死亡を計算し、推計したという。

 

実際に、パンデミックの影響を受けた他の死亡要因についても検討。例えば、超過死亡の原因として、オピオイドの過剰摂取の増加や医療の遅れなども考慮した。

 

一方で昨年の冬はインフルエンザへの感染が激減し、傷害による死亡がわずかに減少したことにより、これらのカテゴリーの死者数は通常よりも低くなったそうだ。

 

このような要因を考慮した結果、ワシントン大学の研究者らは、COVID-19が直接の原因ではない過剰な死亡者数は、他の死亡率の低下によって効果的に相殺され、正味の超過死亡者数はすべてコロナウイルスによるものであると最終的に結論づけた。

 

ファウチ所長も実際は多い点を認める

 

今回の結果について、同研究所の所長・Christopher Murray博士は、次のように述べている。

 

「今回の分析は、COVIDによる死亡者数、そして実際の感染者数を正確に把握することが、パンデミックの間、いかに困難であったかを示しています。COVID-19が直接の原因ではない別の死亡は、他の死亡率の低下によって相殺されたため、正味の超過死亡はすべてコロナウイルスによるものであると結論づけられました」

 

またこの研究結果はアメリカのメディアでも取り上げられて、注目を集めており、米国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長も5月10日、アメリカ国内での実際の死者数は、公式発表よりも多いだろうと述べている。

 

専門家の間では、COVID-19による死亡者数の公式報告が、このウイルスによる真の死亡者数を過小評価しているという点で一致しているという。ただ今回の結果に関しては、他の調査よりも数値の開きが大きく、専門家の間でも意見が分かれている。

 

ハーバード大学の疫学者であるWilliam Hanage氏は「全体的なメッセージ（死亡者数が大幅に低く見積もられており、ある場所によっては他よりも実際には死亡者が多いということ）は正しいと思いますが、絶対的な数値はさまざまな理由から、そんなに多くはありません」

 

また昨年、同様に超過死亡の調査結果を発表したVirginia Commonwealth大学のSteven Woolf博士も「彼ら（ワシントン大学）の超過死亡の推定値は膨大であり、我々の研究や他の研究とは矛盾しています。彼らのモデルには多くの仮定と経験に基づく推測が含まれています」と述べている。（了）

 

 

出典元：npr：New Study Estimates More Than 900,000 People Have Died Of COVID-19 In U.S.(5/6)

出典元：AFP：米コロナ死者数、「間違いなく」実際より少ない ファウチ氏見解(5/10)