密かに地中で燃え続けるゾンビ・ファイヤー、再び引火し森林火災を発生させる
北極圏などでみられる「ゾンビ・ファイヤー」。これまで科学者らによって、この火の研究が進められてきた。
北極圏での山林火災の原因
「ゾンビ・ファイヤー」は珍しい現象で、主にカナダやロシア、アラスカなどの国々で起きていると考えられている。
また新しい研究では、北極圏で起きた山林火災による焼失エリアの3分の1が、この「ゾンビ・ファイヤー」が原因である可能性があるという。
2019年の6月と7月は、世界中の気温が最も高くなったが、北極圏では100件以上の森林火災が発生。シベリアやアラスカ、カナダ、グリーンランドにおいて、数百万ヘクタールも焼失したそうだ。
その結果、244メガトンもの二酸化炭素が排出されたと言われている。
雪の層の下で燃え続ける
「ゾンビ・ファイヤー」は森林火災の結果として残り、「ゾンビ」は文字通り「死から蘇る」という意味で使われている。
実は、地上での森林火災が消火されたのち、密かに地下では泥炭やメタンを燃料として、火種が燃え続けているという。
これらの火は、冬の間も雪の層の下で燃え続け、春になり気温が上昇し、雪が解けて、土壌が乾燥し始めると、再び引火し、森林火災を起こすそうだ。
今回の研究論文の主筆である、オランダ・アムステルダム自由大学のRebecca C Scholten氏も「雪の下では酸素が少ないため、越冬した火はゆっくりと燃え続け、春になって雪が解けて乾燥した環境になると、再び燃え上がるのです。」と語っている。
2002年からの衛星のデータを調査
研究者たちは、2002年から2018年までの間、北極圏における衛星のデータを調査。
その結果、調査期間中に焼失したエリアの約1%が、「ゾンビ・ファイヤー」によるものだったが、これは年によって変化し、ある年には38%にも達していたという。
Rebecca C Scholten氏も「大規模で深刻な火災が多発した暑い夏の後には、越冬火災が増えています。例えば2010年には、アラスカの焼失面積の22%を占めました」と語っている。
研究者らは研究の一環として、ゾンビ火災を発見するアルゴリズムを開発、消防隊員が延焼する前に消火活動を行うことができるようになったそうだ。
その一方で、研究者らは気候変動や地球の気温上昇により、将来このような「ゾンビ・ファイヤー」が増える可能性もあると懸念している。(了)
出典元:BBC:What are ‘zombie fires’ and why is the Arctic Circle on fire?(5/20)