ポンペイの遺跡で発見された人骨から、初めてDNAの抽出に成功
火山灰に埋もれて消えたイタリアの古代都市、ポンペイ。その遺跡から発見された男女の骨から、DNAが抽出された。
昼食を食べているような状態で発見
その男女の骨は1933年に「カーサ・デル・ファブロ」(職人の家)と呼ばれている場所で発見されたという。
ベスビオ火山は西暦79年8月24日に噴火したが、この男女は発見された時、ダイニングルームの隅でうつぶせになり、まるで昼食を食べていたかのような状態に見えたそうだ。
最近の研究によれば、ベスビオ山の噴火による巨大な灰の雲は、20分以内に街の住民にとって致命的なものになった可能性があると言われているが、この男女には逃げる形跡が見られなかったという。
そして今回、男女のDNAが調べられ、逃げなかった理由についての手がかりが得られたそうだ。
#Throwbackthursday 1975. Casa del Fabbro. Scheletri appartenenti alla famiglia rimasta nella domus sperando che il Vesuvio si placasse / 1975. Skeletons discovered in the House of the Smith, which had sought refuge in the dwelling in the hope that the fury of Vesuvius would abate pic.twitter.com/DMZRMu9KQH
— Pompeii Sites (@pompeii_sites) January 31, 2019
結核を引き起こすバクテリアのDNA
男女の骨格は非常に保存状態が良く、最新の技術により、初めてポンペイの人々のわずかな量の骨の粉から、DNAを抽出することができたという。
しかもこの「ポンペイ・ヒトゲノム」には、多くの情報が盛り込まれており、遺伝子のほぼ完全なセットとして抽出されたそうだ。
その結果、男性(推定35歳)の骨格には、結核を引き起こすバクテリアのDNAが含まれていることが判明した。
無傷のDNAが含まれていた
また頭蓋骨の底にある骨の断片には、彼の全遺伝子コードを計算するのに十分な量の無傷のDNAが含まれていたという。
このため、男性はローマ帝国時代にイタリアに住んでいた他の人々と、同じ「遺伝マーカー」(遺伝コードの認識可能な基準点)を共有していることも分かったそうだ。
ただ同時に、サルデーニャ島出身者によく見られる遺伝子群も持っており、このことは、当時のイタリア半島では遺伝的多様性が高かった可能性があることを示唆しているという。
デンマークにある「ルンドベック・ジオジェネティクス・センター」のガブリエレ・スコラーノ教授は、この成果について「ポンペイの生物学的研究において、もっと多くのことを知ることができるでしょう」と語っている。(了)
出典元:BBC:Ancient DNA reveals secrets of Pompeii victims(5/26)
出典元:MailOnline:Human genome of Pompeii victim is sequenced for first time: 35-year-old man killed in the eruption of Mount Vesuvius 1,900 years ago may have suffered from TUBERCULOSIS, scientists say(5/26)