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ウイルスを利用した新たなガンの治療法、人への臨床試験で大きな可能性を示す

ウイルスを利用した新たなガンの治療法、人への臨床試験で大きな可能性を示す
flickr_Libertas Academica

先日、フランスのパリで医学会議が開催され、ウイルスを使った新しいガン治療による臨床試験の結果が発表された。

 

風邪ウイルスを弱めた薬を使用

 

その新しい治療法とは、単純ヘルペスという風邪ウイルスを弱めた薬「RP2」を使ったものだ。

 

発表された内容によれば、人への臨床試験では、約40人の患者がこの治療法を試し、ある人々は「RP2」だけを注射され、他の人たちは、「ニボルマブ(nivolumab)」と呼ばれる別の抗がん剤も一緒に投与されたという。

 

「RP2」のみを投与された9人の患者のうち3人は、腫瘍が縮小。また30人中7人の患者が、「RP2」や「ニボルマブ」などの複合的な治療により恩恵を受けたそうだ。

 

主席研究員のケビン・ハリントン教授は、食道ガンや珍しいタイプの眼球ガンなどを含む、様々な進行ガンにおいて「本当に素晴らしい」治療効果が見られたとし、次のように語っている。

 

「早期臨床試験の主な目的は治療の安全性を確認することであり、病気が進行して現在の治療法が効かなくなったガン患者を対象とするため、初期段階でこれほど優れた効果を見ることは稀です。私は、より多くの患者を治療することで、その効果が継続するかどうかを確認したいと思っています」

 

治験に参加した男性の例

 

ロンドン西部に住む39歳の建築業者、クシシュトフ・ヴォイコフスキさんも、「RP2」のみを注射された被験者の1人で、2017年、口の近くにある唾液腺のガンと診断されたという。

 

しかし手術などの治療を受けたものの、ガンは大きくなり続け、終末期医療を受けることに。

 

その後、この治験に参加する機会を与えられ、2週間に1回、5週間にわたって注射を受け続けたという。

 

その結果、彼のガンは完全に取り除かれ、すでに2年間もガンが確認されていないそうだ。

 

以前の薬をパワーアップした改良版

 

もっともガンと戦うためにウイルスを使うのは、これが初めてではない。イギリスの国民保健サービス「NHS」は数年前に、「T-Vec」と呼ばれる進行性皮膚癌に対する風邪ウイルスを使った治療法を承認しているという。

 

また今回の「RP2」は、「T-Vec」をパワーアップした改良版で、ガン細胞に入り込むと、それを殺すよう、死刑執行令状にサインがされる(つまりガン細胞を殺すよう命令が下される)そうだ。

 

研究所「ガン研究UK」のマリアンヌ・ベーカー博士は、次のように述べている。

 

「科学者達は100年前に、ウイルスがガンの治療に役立つことを発見しましたが、ウイルスを安全かつ効果的に利用することは、困難なことでした。この新しいウイルス療法は、初期の小規模な試験で有望であることを示しています」(了)

 

出展元:BBC:Cancer-killing virus shows promise in patients(9/23)

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