手術後1日1回の薬の服用で、肺癌患者の死亡リスクが半減
ある薬の服用により、肺癌患者の死ぬリスクが大幅に減っていることが、10年に渡る研究によって明らかにされた。
手術後の服用で、死亡リスクが51%減少
その薬とは「オシメルチニブ(Osimertinib)」だ。
先日、アメリカのシカゴで開催された臨床腫瘍学会(Asco)の年次総会において、イェール大学が主導した研究結果が発表された。
その内容によれば、手術後に「オシメルチニブ」という錠剤を1日1回服用すると、肺癌患者の死亡するリスクが51%も劇的に減少することが明らかにされた。
イェール大学がんセンターの副所長で、この研究の筆頭著者であるRoy Herbst博士は、次のように述べている。
「30年前、これらの患者に対してできることは、何もありませんでした。今、我々はこの強力な薬を持っています。どのような病気でも50%というのは大変なことですが、肺癌のように病気において、これは確かなことです。肺癌は一般的に、治療に対して非常に抵抗力があるのです」
.@n8pennell highlights new data from the ADAURA trial, first presented at #ASCO23, on how osimertinib after surgery in adults with EGFR-mutated, stage IB, II, or IIIA NSCLC significantly improves survival. See the data https://t.co/VgLF13o1Bb pic.twitter.com/eyuEVZZz4K
— ASCO (@ASCO) June 4, 2023
26カ国、30歳から86歳の患者を対象
この研究では、26カ国の30歳から86歳の患者を対象とし、この薬が非小細胞肺癌患者(この病気の最も一般的な形態)を助けることができるかどうかを検討したという。
臨床試験では、全ての患者が、EGFR遺伝子変異が認められていたそうだ。
EGFR遺伝子変異は、世界の肺がん患者の約4分の1に認められ、アジアでは40%にものぼり、また男性よりも女性に多く、喫煙経験のない人や軽い喫煙者にも見られるという。
そして臨床試験から5年後、腫瘍の摘出後に毎日錠剤を服用した患者の88%が生存していたのに対し、プラセボ(偽薬)で治療した患者が生き残った割合は、78%だった。
全体として見ると、「オシメルチニブ」を投与された患者は、プラセボを投与された患者と比較して、死亡リスクが51%低かったという。
またステージ1、ステージ2、ステージ3の肺がん患者を含む、すべてのサブグループにわたる解析でも、薬のメリットが認められた。
「オシメルチニブ」は、アストラゼネカ社製の「タグリッソ」としても知られており、イギリスやアメリカ、その他の国々でも、すでにこの薬を利用できる患者はいるが、Herbst博士は「もっと多くの人が(この薬の)恩恵を受けるべきだ」と述べている。(了)
出典元:The Guardian:Lung cancer pill cuts risk of death by half, says ‘thrilling’ study(6/4)