75万件の機密情報漏えい事件、チェルシー・マニング元服役囚が釈放される

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当時、アメリカ史上最大の情報漏洩事件を起こしたチェルシー・マニング(29)氏が釈放され、ソーシャルメディアで初めてその姿を公開した。(※長文となるのでご了承いただきたい)

オバマ前大統領の恩赦で減刑

 

彼女は「ブラッドリー・マニング」という名前で生まれた元陸軍上等兵で、2010年に機密外交文書を告発サイト「ウィキリークス」に漏洩。その罪で2013年に有罪となり、禁錮35年の刑に服していた。

 

ABC Newsによれば、この刑期はこれまでの内部告発者の中でも、アメリカ史上最も長いものになったという。

 

釈放予定は2045年だったが、バラク・オバマ前大統領が退任前に209人を減刑し、64人に恩赦を与え、彼女も減刑される。

 

そして5月16日にカンザス州のレブンワース陸軍施設から釈放され、ネット上に初めて自分の写真を投稿した。

Okay, so here I am everyone!! ? . CC BY-SA! . #HelloWorld

Chelsea E. Manningさん(@xychelsea87)がシェアした投稿 –

75万件もの機密情報を漏えい

 

マニング氏は2007年に陸軍に加わり、2年後にイラクに送られる。そして2010年に戦場の動画やアメリカ大使館の外交公電を含む75万件のファイルを空のCDにコピーし、基地から持ち出したという。

 

彼女はこれを当時まだ知られていなかったウィキリークスに提供。その情報の中には、2007年に米軍ヘリがイラク・バグダッドで複数の民間人を射殺する映像も含まれていたそうだ。

 

下の動画は2007年バグダッドで撮影されたもので、米軍のヘリがロイター記者を掃射する映像が映っている。(実際の映像は2分50秒頃から)

彼女はさらに、グアンタナモ収容所の収監者たちについての報告書や、アフガニスタンでの戦争に関する軍事情報なども漏洩させた。

 

このリークをきっかけに、ガーディアンやニューヨーク・タイムズなどがアフガニスタンやイラクの戦争に関する一連の機密情報を公表することに。

 

マニング氏は漏洩の動機について「自国への愛と他人への義務感から」文書を漏洩したと供述している。

 

彼女によると、当時アメリカ軍は戦争の遂行について報道を規制していたという。

 

その上で上申書において「現在、報道の自由に対する制限と政府の過剰な秘密主義のせいで、アメリカ国民は自分たちが出資している戦争で何が起きているのか十分把握できていないと思います」と述べたそうだ。

 

大量の機密漏洩は当時、米国史上最大規模で、米政府が面目を失う結果となり、オバマ政権は政府関係者による情報漏洩の取り締まりを強化したとされている。

米国の世論が大きく2つに割れる

 

マニング氏が投獄されると、内部告発者の権利を擁護する人々の間で議論が巻き起こり、米国世論が分断された。

 

ジュリアン・アサンジ氏と同様、マニング氏は1970年代に機密報告書「ペンタゴン・ペーパーズ」を漏洩した内部告発者ダニエル・エルズバーグ氏から支援されていたという。

 

またバンド「R.E.M」のマイケル・スタイプ氏やデザイナーのヴィヴィアン・ウエストウッド氏などの有名人もマニング氏を支持していたとされる。

 

さらに釈放を求めて10万人以上がホワイトハウスへの請願に署名をし、減刑活動は広く周知されるようになった。

 

「マニング上等兵家族基金」のキアロン・オライリー氏は、「国連が違法だと宣言した戦争の真実を明らかにした服役囚を、そもそも収監したのが間違いだ」と述べている。

 

またウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジ氏は、漏洩はあらゆる人にとって無害だと主張。チュニジアなどの国家の腐敗を暴露したことで、2011年に北アフリカや中東で一連の革命「アラブの春」を促したという。

 

一方アメリカ政府は、漏洩によって抑圧的な政権下でアメリカに協力している人々の信用が損なわれたと批判。

 

国民の中にも、マニング氏が米軍関係者の安全を脅かした売国者、米軍の秘密を明るみに出した告発者だという人たちも多くいたという。

 

裁判においてマニング氏本人も、判決言い渡しの際に「米国に傷を与えた」ことを謝罪し、自分が「世界をもっと良い場所にできる」と勘違いしていたと証言した。

 

さらに判決言い渡しの翌日、2013年8月22日に、彼女はトランスジェンダーであることを告白。男性ではなく女性として生活することを公言し、今後はブラッドリーという男性名ではなく「チェルシー・マニング」を名乗るとも発表した。

刑務所でどのように過ごしたのか

 

カンザス州レブンワース陸軍基地の男性用刑務所に収容されたマニング氏は、独房で監禁状態とされ、2度にわたり自殺未遂を起こした。

 

また自殺未遂の後には、軍が性別違和症候群の治療を提供すると合意するまで、ハンガーストライキを続けたという。その後、彼女の願いは聞き入れられ、2015年2月にホルモン治療を受けることになる。

 

やがてオバマ前大統領の任期が迫り、彼女に対する恩赦への期待が高まっていった。そんな中、同じく内部告発者のエドワード・スノーデン氏はTwitterで次のように書いている。

 

「大統領、もしあなたがホワイトハウスを去るときに1つだけ恩赦を与えるなら、どうかチェルシー・マニングを釈放してください。彼女の人生を救えるのはあなただけです」

 

減刑についての議論も別れる

 

オバマ大統領が恩赦を行い、マニング服役囚を減刑させたことは、支援者たちにより歓迎されたという。

 

彼女の顧問弁護士、デイビッド・クームズ氏はBBCに対し「減刑されて服役囚は大いに安心するだろう。オバマ大統領による実に素晴らしい慈悲の行為だ。私もチェルシーも、大統領の選択にとても感謝している」と語っている。

 

しかし共和党幹部は恩赦を与えたことを強く批判。重鎮のジョン・マケイン上院議員も、大統領の判断は「重大な間違いで、諜報行為の続発を促すことになると懸念する」と発言している。

 

さらにライアン下院議長も「大統領の判断は、ひたすらとんでもないとしか言いようがない」と非難し、マニング服役囚は「米国市民の命を危険にさらした」と攻撃した。

 

さらにドナルド・トランプ大統領はマニング氏を「恩知らずの裏切者」と呼んだという。

「素晴らしい支援に感謝しています」

 

釈放に先立ち、彼女は独房から英紙ガーディアンに次のように語っている。

 

「春の暖かい空気を再び吸えるのを楽しみにしています。レーザーワイヤや面会ブースなしに人々や自然と再びつながるという、言葉で表せない感情を求めています。家族や友人と再び抱擁できることを望んでいます。そして水泳です。泳ぎに行きたいです!」

 

釈放されてからもABC Newsに対し次のように語った。

 

「過去数年に渡り、世界中の多くの人々から与えられた素晴らしい支援に感謝しています。自分の人生を立て直すと同時に、常に過去の過ちを繰り返さないことを忘れないつもりです。過去は常に私に影響を与え続けるでしょう。その影響を最終目標としてではなく、出発点として思い返しながら、心に留めておくつもりです」

 

そしてツイッターやインスタグラムにおいて、@xychelsea87というアカウント名で、釈放後の姿を初めて披露。

 

ピザの写真を写した投稿の中で「私はすでに最初の熱い、そして脂っこいピザを楽しんでいます」とコメントしている。(了)

So, im already enjoying my first hot, greasy pizza ?

Chelsea E. Manningさん(@xychelsea87)がシェアした投稿 –

 

 

出展元:BBC:オバマ米大統領、機密漏洩のマニング服役囚に減刑(1/18)

出展元:Huffingtonpost:チェルシー・マニングが釈放される日が来た。アメリカ機密文書を漏洩したトランスジェンダー(5/17)

出展元:ABC News:Chelsea Manning posts 1st photo revealing new look as a woman(5/19)

 

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