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アイヌ新法、その成立にアイヌ出身の異色ミュージシャンが思うこととは

アイヌ新法、その成立にアイヌ出身の異色ミュージシャンが思うこととは
Facebook/OKI DUB AINU BAND

今月19日、アイヌ民族を法律上初めて日本の“先住民族”と位置付けた新法が成立したことは、既に伝えられるところ。

 

そんな中、アイヌの血を引く人々に今、再び注目が集まっている。

 

祖先を忘れることは“根を持たない木”

 

ミュージシャンとして「OKI DUB AINU BAND」の中心メンバーを務め、“OKI”との名で知られる加納沖さん(62)も、そんなアイヌの血を引く人の一人だ。

 

和人(アイヌに対し純粋な日本人である人を指す)の母親とアイヌの血を引く父親との間に生まれた加納さんが、自らにアイヌの血が流れていることを知ったのは20歳になった時のこと。

 

加納さんの両親は離婚しており、それまで父がアイヌであることを母親が加納さんに対して伝えることはなかったという。

 

神奈川県で生まれ育ち、レゲエ音楽に魅了されたという加納さんは、ジャマイカ出身のレゲエ・ミュージシャンとして多大な影響を与えたボブ・マーリーの言葉を借りつつ、こう指摘する。

 

「ボブ・マーリーは、祖先について忘れた人々は根を持たない木と同じであると歌った。10代の頃、その歌詞を見たが、それは私にとって大人になってから、より意味を持つようになった」

 

OKI official website / Chikar Studio

コミュニティ外で育った人に拒絶感を示すアイヌ

 

自らがアイヌの血を引くと知った加納さんは、アイヌについてより知識を深めることを決意。

 

アイヌである父親に会いに北海道まで飛び、さらにそこで出会ったアイヌのコミュニティに親近感を覚えたという。

 

しかし加納さんのアイヌに対する思いは、つかの間のものだった。

 

アイヌ・コミュニティの外で育った加納さんに対し、一部のアイヌの人々が拒絶感を示したのだ。

 

さらに彼らは日本統治の下で、アイヌが耐えなければならなかった苦しみを加納さんが完全に理解することは出来ないだろう、とまで言ったという。

 

アイヌ民族の写真(Wikipedia Common)

居場所をなくして渡った米国、アイヌとしての自覚

 

純粋な日本人でもなければアイヌ人でもない―。

 

そう感じた加納さんは、その後1980年代後半、米国ニューヨークへと渡ることを決意。

 

しかしそこでの出会いは、加納さんの人生に新たな風を吹き込むこととなる。

 

ニューヨークの生活で、加納さんはネイティブアメリカンの人々と知り合ったのだ。

 

当時、先住民族は世界的に政府から抑圧されており、それを知った加納さんは再びアイヌとしての意識を強めることとなる。

 

アイヌとの接点を持つ必要性を感じた加納さんは1993年、日本に帰国。

 

そしてアイヌの伝統楽器として知られる“トンコリ”と出会い、その演奏に取り組むようになったという。

 

OKI official website / Chikar Studio

 

トンコリ奏者として大成、国連への参加も

 

ただトンコリ奏者の“師匠”を見つけ練習に励んだという加納さんにとって、その最初の頃はトンコリの演奏は簡単なことではなかったようだ。

 

ロック音楽の先駆者として音楽界に多大な影響を与えたギタリスト、ジミ・ヘンドリックスを引き合いに、トンコリの練習について「ギターの演奏方法を学びながらジミ・ヘンドリックスのコピーをするようなものだった」という加納さん。

 

しかしそんな努力が実を結び、2005年加納さんは晴れて「OKI DUB AINU BAND」を結成。

 

アイヌの伝統音楽にレゲエやロック、さらには民族を融合させた独自の音楽性を確立させ、さらに世界にアイヌ音楽を伝えるため自らレコードレーベルまで立ち上げた。

 

以来、オーストラリアやヨーロッパで世界ツアーを行ってきたという。

 

Facebbok / OKI DUB AINU BAND

 

それだけではなく、アイヌの声を代弁するため国連の作業部会の一つである、先住民作業部会に参加したこともあったとのことだ。

 

新法に対して思うこととは?

 

今回成立した新法に対しては、アイヌ民族を“先住民族”として法で正式に認めたことに対し、評価の声も高い。

 

ただ新法においてはアイヌの人々が訴えてきた“先住権”は明記されておらず、生活や教育面での支援についても触れられていない。

 

現状でアイヌの若者には、一部の大学でアイヌ固有の文化や言語を学ぶための奨学金制度が存在しているが、加納さんはアイヌの人々と伝統を守るためには支援は拡大される必要があると訴える。

 

「より多くのアイヌが高等教育機関へと進学し、アイヌの弁護士になったり映画監督になったり、教授になったりする必要がある」という加納さん。

 

「このようなことが起きない限り、日本人(和人)が我々を常にコントロールすることになるだろう」

 

法律上初めて“先住民族”として位置づけられたアイヌ民族。彼らに対する理解を深め、支援を拡大させるためには、加納さんの活動はまだ道半ばなのかもしれない。(了)

 

 

出典:CNN:Japan’s ‘vanishing’ Ainu will finally be recognized as indigenous People(4/23)

出典:朝日新聞:「先住民族であるアイヌの人々…」新法に明記、万感の声(4/19)

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