Binah.ai

新型コロナウイルス感染拡大が未だ続く中、多くの企業がその防止に貢献し得るサービスの開発に取り組んでいる。

そのような中、カナダの病院が新型コロナウイルス対策として“革命的”なアプリの導入に向け動き始めているとして、注目を集めている。

アプリを起動させるだけで“バイタルサイン”測定

“革命的”と形容されるスマートフォンアプリの導入に向け動いているのは、カナダ東部のケベック州モントリオールに位置する大学病院「Sir Mortimer B. Davis Jewish General Hospital」だ。

同病院が導入に向け準備を進めているのは、イスラエルのIT企業「Binah.ai」とカナダで医療技術の提供を行う企業「Carebook」が共同で開発したもの。

その仕組みは至って簡単で、ユーザーがアプリを起動させるだけで1分以内に人の全身状態を把握する際の基本となる“バイタルサイン（脈拍や血圧、呼吸、体温など）”が測定出来るといい、このようなスマートフォンアプリは世界初のものとなるという。

アプリが利用可能であるのはiPhoneであればiPhone8以降、サムソンであればモデル7以降とのこと。

その使用に際しては利用者の写真撮影や顔認証は必要なく、バイタルサインのシェアは利用者の合意がある場合にのみ行われるという。

アプリの利用には3つの場面を想定

しかしこのアプリが新型コロナウイルス対策として、どのように役立つというのだろうか。

これについてJewish General Hospitalは3つの場面を想定しているといい、まずその一つ目に“トリアージナース”の使用を挙げる。

“トリアージナース”とは、患者の症状に応じて治療の優先度を選定する看護師のこと。アプリを利用することで、救急救命室に到着した患者が呼吸器疾患における特徴的な症状を有するか否か、トリアージナースらが判断することが可能になるという。

アプリを使用すると患者の顔の前にスマートフォンをかざすだけで心拍数、呼吸速度、そして血液中における酸素飽和度の検査が出来、それによりトリアージナースらは患者に直接触れることなく新型コロナウイルス感染可能性の有無を確認出来るということだ。

2つ目に想定される場面は、新型コロナウイルス感染症に罹患していることが既に判明している患者が収容される病棟での利用だ。

アプリを患者自らが利用し検査を行うことで、病室内に看護師が直接入る回数を減らす。すると結果的に供給が追い付かない医療従事者用の手袋やマスク、さらにはその他の防護用具の節約が可能になるという。

そして3つ目に想定されるのが、モントリオール西端部に暮らす人々の在宅での利用だ。

同地域はモントリオールにおける新型コロナウイルス感染症への罹患割合が最も高いとされており、アプリを利用することで自宅にいながら感染可能性の有無を確認出来るという。

Jewish General Hospitalを担当する保健当局のLawrence Rosenberg氏は、このアプリについて“ゲームチェンジャー”になる潜在性が秘められているとする。

というのもアプリを利用すればウイルスに対して陽性でありながら僅かな、あるいは初期の症状しかなく、新型コロナウイルスに感染していることがわかりにくい人であっても、早期発見が可能になるためだ。

ケベック州首相（知事）のFrançois Legault氏は、同州におけるロックダウンを5月4日まで行うと現時点で発表しており、アプリの利用開始はこの時期に合わせて行われるようだ。

最新式のスマートフォン1台あれば、誰でも利用することが可能になるというこのアプリ。

世界には検査すらも受けることが出来ず、自分が新型コロナウイルスに感染しているのかわかなぬまま重症化して亡くなる人も出ているが、このアプリが世界各国で導入され、多くの人命を救うことにつながることを期待したい。（了）

出典：Montreal Gazette：Jewish General set to roll out game-changing app in coronavirus battle（4/8）