米国の被害が甚大な理由?肥満が新型コロナ重症化のリスクを高めていた
全世界で未だ感染者を増やし続けている新型コロナウイルス。
中でも先月末時点で100万人を超える感染者、5万人を超える犠牲者を出してしまったアメリカは、感染者・犠牲者共に世界のトップに位置しており、この理由について様々な議論が交わされてきた。
しかしそのような中、米国人がこれほどまでに犠牲となっている理由として”肥満”である人の多さが関係しているのではないかとする研究が明らかになってきている。
重度の肥満は新型コロナで合併症の危機に…
肥満と新型コロナウイルスに罹患した際のリスクについて警鐘を鳴らすのは、米国の複数の研究機関だ。
米国の感染症対策研究機関であるアメリカ疾病予防管理センターは、ボディマス指数(BMI)が40以上の”重度の肥満”とされる人は、新型コロナウイルス感染の際に”合併症が生じる危険性”が最も高いグループの一つに分類されることを指摘。
さらにニューヨーク大学傘下の医療機関であるランゴーン医療センターの研究においても、”60歳未満で35を上回るBMIの人においては、健康的なBMI指数の患者と比較して新型コロナウイルスに感染した際に ICUでの治療が必要とされる可能性が少なくとも2倍高い”とされている。
さらにランゴーン医療センターでの研究を率いたJennifer Lighter氏は、”病的なまでに太っている人は、肥満でない新型コロナウイルス感染者と比較し致死率が3倍も高い”とも指摘。
米国にとって新型コロナウイルスは”弱点”であり、世界における他の地域と比較しても高い致死率と死亡率をもたらす可能性があるとした。
肥満の方が死亡率高い理由とは
しかしそれでは新型コロナウイルスに罹患した場合、肥満である方がより高い死の危険に晒されるのは一体なぜなのだろうか。
この理由については複数の推論が上がっている。
中でもLighter氏が上げるのは、肥満の人における肺の”予備能”の低さだ。
“予備能”とは何らかの原因により臓器の機能が低下した際に、それを補い一定のパフォーマンスを保とうとする能力のこと。
これが閉塞性睡眠時無呼吸症候群や気管支喘息、拘束性肺疾患といった病気を抱える人の割合が高い肥満の人においては低いため、新型コロナウイルスのような呼吸器系に影響を与えるウイルスに感染した場合、重大な肺疾患に至るリスクを高めているのだという。
またLighter氏によると、肥満の人においては心血管疾患や糖尿病、高脂血症といった疾患が進行してしまうこと、また新型コロナウイルスが人体に侵入する際に受容体となる“ACE2受容体”が脂肪細胞にも存在するため、肥満の人においてはウイルスの複製がより多く行われてしまうことなども原因であるとしている。
米国では人口の4割以上が肥満…
アメリカ疾病予防管理センターが2月に発表した統計によると、2017年から2018年にかけ米国では肥満率が42.4%に到達。同国における肥満率としては史上最大の割合が示されることとなってしまった。
またそれは子供においても例外ではなく、6人に1人の子供は肥満であるという。
中でもルイジアナ州とミシシッピ州は他州と比較しても高い肥満率を示しており、これら2州においては多くの新型コロナウイルス感染者が肥満であることも判明している。
肥満であるということが新型コロナウイルスに感染した際、重症化のリスクを高める可能性を示す数々の研究結果が明らかになってきた今。リスクを軽減させたいのであれば外に出て身体を動かすことが第一である一方、外出制限が敷かれる現状ではそれもなかなか難しい。
自らが肥満であると自覚する人は、まずはこれまでの生活習慣を見直すと共に、自宅でも出来る運動法を考えるべきではないだろうか。(了)
出典:Fox News:Are America’s high obesity levels leading to more coronavirus deaths?(4/30)
出典:USA Today:Coronavirus, diabetes, obesity and other underlying conditions: Which patients are most at risk?(4/16)
出典:リーレクリニック大手町:高血圧治療薬・降圧薬(ACE・ARB)とコロナ(COVID19)