殺すために育てる…南アフリカでライオンの繁殖ビジネスを禁止へ
南アフリカ共和国では、現在観光客にライオンなどをハンティングさせるビジネスが存在しているが、今後はそのような行為が禁止になると見られている。
諮問委員会の報告に従う決断
南アフリカ政府は5月2日、ライオンなどを使った繁殖産業を廃止する計画を発表。さらにサイの角や象牙などの取引に関する国際的な禁止条項に反対しないと発表した。
この発表は、政府が任命した諮問委員会による600ページに及ぶ報告書の公開とともに行われたという。
諮問委員会は、ゾウやライオン、ヒョウ、サイなどの管理や繁殖、ハンティング、貿易に関する国の政策や法律、実践の見直しを行った。
その結果、今回の決定が下されたのだが、政府の林業・漁業・環境大臣のBarbara Creecy氏は声明において次のように述べている。
「委員会は、飼育下のライオン産業が、野生のライオン保護の持続可能性にリスクをもたらすことを確認しました。委員会は、南アフリカがライオンの飼育繁殖を行わないこと、ライオンを飼育下に置かないこと、飼育下のライオンやその派生物を商業的に利用しないことを勧告しています。私はこれに沿って行動し、実施における必要な協議を確実に行うよう同局に要請しました」
同時にCreecy大臣は「この提言は狩猟産業に不利なものではなく、提言を実施することで、南アフリカの国際的な評価を保護・向上させる結果となり、エコツーリズムや責任ある狩猟のために、さらに競争力のある目的地として再評価されることになる」と強調した。
大人になったライオンは狩猟の標的に
南アフリカはここ数年、誕生から死に至るまでのすべての段階で、飼育されているライオンを商品化しているといった批判を浴びてきたという。
実際にこの国では今でも、何千頭ものライオンやその他のネコ科の動物を繁殖させ、育てている施設が数百はあると言われている。
しかも動物たちはそこで狭い檻に入れられ、好ましくない環境に置かれているそうだ。また子供は生まれてすぐに親から引き離され、メスは絶えず繁殖をさせられているという。
子供のライオンは、幼くて小さいうちに観光客とのふれあいの場で使われ、思春期のライオンは、人間と一緒に歩かせるなど、他の観光活動に利用されている。
しかし観光客と安全に接することができないほど成長したライオンは、再び繁殖産業にリサイクルされるか、他の施設に売られるそうだ。
施設ではフェンスに囲まれた敷地に入れられて、逃げ場のない状態で趣味の狩猟、すなわち「缶詰ハンティング」の標的にされ、撃ち殺されるか、骨を取るために殺されるという。
規制が不十分なためビジネスとして成長
ライオンの骨、歯、爪は通常、東アジアや東南アジアに出荷され、宝石に使われたり、高級品のために虎の部位と偽って宣伝されたりすることが多いと言われている。
評論家によると、これは規制が不十分で残酷なビジネスであり、ライオンの部位の需要が高まる中、ますます儲かる産業として爆発的に成長したという。
世界的な動物保護NPOである「World Animal Protection」のEdith Kabesiime氏は、5月2日の声明で次のように述べている。
「南アフリカでは、毎年何千頭ものライオンが、残酷な商業的繁殖施設で悲惨な生活の中で生まれています。南アフリカ政府の今回の動きは勇気あるもので、長期的かつ意味のある変化をもたらすための取り組みの第一歩を踏み出したものです。これは野生動物のための勝利です」(了)
出典元:ABC News:South Africa to end captive lion breeding, bone trade(5/3)