中国が新疆ウイグル自治区で深刻な人権侵害、国連が初めて報告書を発表
スイスのジュネーブに本部のある国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は8月31日、中国が新疆ウイグル自治区で行っていることについて、初めて正式な報告書を発表した。
中国の「反テロ法体系」に起因
国連人権高等弁務官事務所は報告書の中で、新疆ウイグル自治区西部でウイグル族などの少数民族を恣意的に拘束していることは、「人道に対する罪」に相当する可能性があると指摘した。
48ページに及ぶこの報告書は、「中国政府によるテロ対策と過激派対策戦略の適用」の名の下に、ウイグル人に対して深刻な人権侵害が行われていると述べているという。
またこの侵害は、国際人権規範の観点から深く問題視される、曖昧で制限のない概念を含む中国国内の「反テロ法体系」に起因すると指摘している。
その上で報告書は「ウイグル人をはじめとするイスラム教徒の多い集団のメンバーに対する、恣意的かつ差別的な拘束の程度は、国際犯罪、特に人道に対する罪を構成する可能性がある」と指摘した。
UN Human Rights Office issues assessment of human rights concerns in #China’s #Xinjiang #Uyghur Autonomous Region. Read more: https://t.co/F2wpHFpIoy pic.twitter.com/f83bmfY7bZ
— UN Human Rights (@UNHumanRights) August 31, 2022
性的暴力や拷問、虐待の例も示す
調査においてOHCHR側は中国側に情報を要求し、得られた資料を基に、国際人権法に照らして厳格に評価したという。
そして報告書は、中国側が名付けた「職業訓練センター(実際は収容所)」に拘束されている26人にインタビューを行った内容をまとめており、さまざまな「拷問のパターン」も挙げているという。(拷問の内容については、過去にBBCが詳しく報じている)
さらに、性的暴力や「家族計画政策の強制的な実施による、リプロダクティブ・ライツ(性と生殖における権利)の侵害」などを含む、拷問や虐待の信頼できる疑惑も発見されたとしている。
もっともこの報告書には「ジェノサイド(民族浄化)」という言葉は使われず、実際に収容所に収容された人数の推定値も挙げていない。
ただし報告書では「少なくとも2017年から2019年にかけて「大規模な恣意的拘束のパターンが発生したと結論づけるのは妥当だ」と述べられている。
その上で報告書は、中国政府に対し、恣意的に拘束されたすべての個人を解放し、失踪した個人の所在を明らかにするよう求めた。
中国政府は反発
一方、中国政府はこの報告書に反発し、「反中国勢力が捏造した偽情報と嘘に基づき、罪の推定による『評価』は、中国の法律と政策を歪曲し、中国をいたずらに中傷し、貶め、中国の内政に干渉している」と述べたという。
今回の報告書は、国連として初めて中国政府によるウイグルの人々への人権侵害を認めたもので、北京からの圧力にもかかわらず、バチェレ国連人権高等弁務官が退官する直前に発表された。
また報告書は、中国共産党政府が行っている新疆ウイグル自治区への権利侵害について、国際社会に対し「緊急に目を向けること」を求めている。(了)
出典元:INDEPENDENT:UN finds possible ‘crimes against humanity’ in report on China’s Xinjiang(9/2)