あなたは大丈夫? 食べたものが腸を通過する時間が健康を左右する可能性

食べたものが腸内を移動する「腸内通過時間」が、腸内細菌の構成や代謝に大きく影響する可能性があることを知っているだろうか。
個人差が大きく、同じ人でも日々変動することが知られている「腸内通過時間」。特に大腸での滞在時間が長くなると、腸内細菌の組成に強い影響を与えるとされている。
医学誌『Gut』に掲載されたレビュー論文と、それを紹介したScienceAlertの記事は、腸内通過時間が腸内細菌研究において重要な要素であるにもかかわらず、これまで十分に考慮されてこなかったと指摘。腸内通過時間は、腸内細菌の働きや作られる物質を変え、健康にも影響する可能性がある要因として紹介している。
便が長く腸に留まることで起こること
私たちが食べたものは、大腸で腸内細菌によって分解される。
腸内を通過する時間が適切な場合には、腸内細菌は主に食物繊維などの炭水化物を利用し、これらは腸の働きを支える物質として知られる短鎖脂肪酸(酢酸や酪酸など)を作り出す。
しかし、腸内通過時間が長くなると、腸内細菌が利用できる炭水化物が減少し、タンパク質の分解へと代謝を切り替える。この過程で増加すると言われているのが、アンモニア、硫化水素、フェノール類、インドール類などのこれまでとは異なる代謝産物だ。
レビュー論文では、こうした代謝産物の変化が腸粘膜の損傷や炎症を引き起こす可能性があると説明されている。
短すぎる通過時間もNG
一方で、腸内通過時間は短ければ良いというわけでもない。
レビュー論文は、腸内通過時間が短すぎる場合にも、腸内細菌による発酵が十分に行われず、短鎖脂肪酸などの代謝産物の産生に影響する可能性があると指摘している。
つまり、便が腸内に留まる時間は長すぎても短すぎても、腸内細菌にとって好ましい状況とはならないようだ。
食事や生活習慣が通過時間を変動させる
腸内通過時間は、食事内容、年齢、性別、身体活動、ストレス、薬剤、遺伝など多くの要因によって変動する。男性は女性より通過時間が短い傾向があり、高齢者では長くなる傾向がある。
脂質の多い食事は通過時間を延長させ、食物繊維は通過時間を短縮させることが示されている。
長い滞留時間は疾患リスクと関連する可能性
ScienceAlertの記事は、腸内通過時間の異常が健康リスクと関連する可能性を紹介。炎症性腸疾患(IBD)では下痢や便秘がみられ、これらが通過時間の変動と関係する可能性があるとしている。
便秘や通過時間の延長は、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症などの神経疾患で報告されている。また、レビュー論文では、通過時間の延長によって増加する代謝産物が、腸粘膜の損傷や炎症を引き起こす可能性があると説明している。
腸内通過時間は見過ごされてきた要因だった
これまでの腸内細菌研究では、食事や薬剤などの影響は考慮されることが多かった一方で、腸内細菌や代謝に大きな影響を与えるにもかかわらず、腸内通過時間そのものは十分に考慮されてこなかったと研究者らは指摘している。
しかし近年では、腸内通過時間そのものが腸内細菌叢(大腸にいる膨大な種類の細菌の集まり)や代謝に大きな影響を及ぼすことが明らかになってきた。医学誌『Gut』に掲載されたレビュー論文では、今後は腸内細菌と健康の関係を調べる上で、腸内通過時間を重要な要因として扱う必要があると結論付けている。
出典元:GUT:Advancing human gut microbiota research by considering gut transit time(2023/1)
出典元:ScienceAlert:How Long Poop Stays in Your Body Could Have A Surprisingly Big Impact On Your Disease Risk(7/30)


























