細胞から培養して作られた“鶏肉”のチキンナゲット、2018年末に販売か?
人工的に作られた“鶏肉”によるチキンナゲットが、2018年末までに試験的に販売されるとして、注目を集めている。
細胞から培養して作られた“鶏肉”
人工的に作られた“鶏肉”によるチキンナゲットの販売を目指すのは、米国カリフォルニア州に本拠を構える企業「JUST Meat」。
同社の“鶏肉”は生きた鶏を殺して製造されたものではなく、生きた鶏の細胞を培養して作られたもの。
鶏肉の他にも同社は牛肉や豚肉、さらには魚介類なども同様の方法により製造しているという。
これについてJUST Meat社は、“このアイデアは、鶏肉そのものが無限の供給源を持つということ。そしてほんの少しの細胞から、本来無限に鶏肉を培養させていくことができるんです”と説明している。
さらに“食べ物を生産するため、殺傷を行う必要はありません”としている。
“鶏肉”の培養方法とは?
培養に当たってJUST Meat社は、見つけうる限り“最良の鶏”の羽を採取。
その羽から細胞を採取し、植物由来の栄養を与えることで、“鶏”へと培養するとしている。
また細胞から培養し、チキンナゲットを生産するまでにかかる時間はわずか2日程度という。
これについてJUST Meat社のThomas Bowman氏は、「最初の試作品のため、私は自分自身に‘かつてない最高のチキンナゲットを作るんだ’と言い聞かせました」としている。
実際のお味は?
しかし気になるのは、人工的に培養された“鶏肉”によるチキンナゲットの実際の味だ。
これについてはBBCのリポーターがJUST Meat社を訪れ、チキンナゲットを試食した感想として“素晴らしい”とコメント。
さらに“マクドナルドやケンタッキー・フライド・チキンのチキンナゲットから期待するよりも僅かに柔らかい食感であるにも関わらず、皮はカリッとしていて肉の風味は豊かだ”とし、培養された鶏肉によるチキンナゲットを絶賛している。
食料需要の突破口として期待
一方、肉を細胞から培養して人工的に作り出す、というアイデアは何も新しいものではない。
2013年には、細胞から培養して作られた肉によるハンバーガーが話題に。
当時はたった一つのパテに300ドル(約3万4000円)以上という非常に高値となっていたものの、それから2年ほどして値段そのものは通常のパテと大差ないほどまでに下落している。
しかしそれにも関わらず、商業生産を開始させた企業は存在しないという。
また2017年に行われた研究によると、肉を細胞から培養するためには豆などの肉に代わる栄養源を生産するよりも、より多くのエネルギーが必要とされることが明らかとなっている。
さらに植物のみならず生きた鶏や牛を育てるのと比較しても、人工肉を培養するためにはより多くのエネルギーが必要とされるとのことだ。
しかし生きた家畜を育てるということは、環境に対する負荷が非常に大きいことも事実だ。
肉や卵、牛乳といった食糧生産のため家畜を育てることによっては、多くの二酸化炭素が排出され地球温暖化を促すこととなる。
さらに世界人口が増加するにつれ、肉の需要はこれまでよりもさらに増加していくことが見積もられている。
それらを鑑みると、JUST Meat社のような肉を人工的に培養するという方法は、環境面や食糧需給の面での突破口となる可能性を秘めているように思われる。
人工的に“鶏肉”を培養し、チキンナゲットを生産するというJUST Meat社の試み。個人的には同社の事業が軌道に乗り、“素晴らしい”と絶賛されたチキンナゲットを味わえる日が訪れるのが楽しみだ。(了)
出典:ABC News:Chicken nuggets lab-grown from feathers to go on sale by end of year, company says (10/21)
出典:Mirror.co.uk:Lab-grown CHICKEN NUGGETS could go on sale by the end of 2018(11/6)
出典:BBC News:Would you eat slaughter-free meat?(10/15)