ベートーベンの毛髪からDNAを採取、どんな病気に苦しんでいたのか調査
交響曲第5番『運命』などで知られる作曲家・ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンのDNAが採取され、彼が苦しんできた病気を解明しようとする研究が進められた。
残された髪の毛を分析
ドイツの作曲家・ベートーベンは晩年、耳が聞こえなくなるなど、さまざまな病気を抱えていたとされ、彼自身も医師たちに自分の健康問題を研究してほしいと書き残していたという。
そこで今回、イギリス・ケンブリッジ大学や、ドイツ・マックス・プランク進化人類学研究所などの研究者らが、調査を開始。保存されていたベートーベンの髪の束から、遺伝子の手がかりを得ることができたそうだ。
そして分析の結果、ベートーベンに肝臓病の遺伝的リスクがあり、晩年には肝臓にダメージを与えるB型肝炎に感染していたことが判明。また慢性的な飲酒が、ベートーベンの死因とされる肝不全を引き起こすのに十分であったと考えられたという。
ただし難聴や、深刻な胃の病気について解明することはできなかったそうだ。
意外な事実も明らかに
研究者らは、「ほぼ間違いなく本物である」と思われるベートーベンの5本の髪に注目。髪を一本ずつ洗浄した後、溶液に溶かしてDNAの塊を取り出したという。
そして最終的には、ベートーベンの髪を3メートル近くも使って、遺伝的な病気の兆候を調べるゲノム(塩基配列)を作り上げることができたそうだ。
またこの研究を進める中で、興味深い事実も明らかになったという。
実は、ベートーベン一族のDNAを検査したところ、父親側に受け継がれるY染色体に矛盾があることが判明。5人のY染色体は互いに一致したが、ベートーベン自身のY染色体は一致しなかったそうだ。
このことは、ベートーベンが生まれる前の世代のどこかで、「ペア外父性事象」があった可能性があり、つまりベートーベンの家系の中に、婚外恋愛で生まれた子供がいたことが示唆されたという。
ベートーベンは1827年3月26日、ウィーンにて56歳の若さで亡くなっており、今年は196年目にあたる。(了)
出典元:ABC News:What made Beethoven sick? DNA from his hair offers clues(3/23)