TV「スタートレック」に出演した黒人女優、ニシェル・ニコルズさんが死去
テレビシリーズの『スタートレック』に出演し、ハリウッドにおける黒人女性の壁を破った女優が、89歳で亡くなった。
固定概念を打ち破り、役に挑戦
その女優とは、ニシェル・ニコルズさん。彼女は1966年から69年にかけて放送されたテレビシリーズ『スタートレック』で通信士官のウフーラを演じた人物だ。
当時はまだ黒人差別がひどく、公民権運動が盛んで、黒人女性は召使の役しかできないと考えられていたという。
しかしニコルズさんは、そんな固定概念を打ち破り、「スタートレック」シリーズで「USSエンタープライズ」の乗組員の役に挑戦し、ハリウッドにおける黒人女性の壁を破ったと言われている。
彼女の息子であるカイル・ジョンソンさんによると、ニコルズさんは7月30日にニューメキシコ州の町、シルバーシティで亡くなったという。
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— Virtual Trek Con (@VirtualTrekCon) May 18, 2020
キング牧師もファンだった
オリジナルの『スタートレック』は1966年9月8日にNBCで初放送された。(最初の作品のタイトルは『宇宙大作戦』)
その多文化・多人種の配役は、23世紀には人間の多様性が完全に受け入れられるという、制作者ジーン・ロッデンベリー氏からの、視聴者へのメッセージだったと考えられている。
またニコルズさんによれば、公民権運動の指導者であるマーティン・ルーサー・キング・ジュニア氏(キング牧師)が「スタートレック」のファンで、彼女の役を賞賛していたという。
しかし1967年に公民権運動の集会でキング牧師に会った当時、ニコルズさんは番組の第2シーズンへの復帰を断念していたとか。
ニコルズさん2008年のタルサ・ワールド紙でのインタビューで、次のように振り返っている。
「共演者に会えなくなるのは寂しいし、番組も辞めると言ったら、彼(キング牧師)はとても真剣になって、『君には、そんなことはできない』と言ったのです。また、あなたはテレビの顔を永遠に変えてしまった。それゆえ、人々の心をも変えてしまったとも言ったのです。キング牧師のあの先見の明は、私の人生に稲妻を走らせました」
黒人女性と白人男性のキスシーン
このテレビシリーズの第3シーズンでは、なんとウィリアム・シャトナー氏が演じるカーク船長と、ニコルズさんが演じるウフーラ通信士がキスをしたという。
これも当時としては異例のことで、アメリカのテレビシリーズで、黒人女性と白人男性のキスシーンが放送されたのは初めてだったそうだ。
ナショナル・パブリック・ラジオのテレビ評論家、エリック・デガンズによれば、このキスシーンは「こうした問題がそれほど大きな問題ではない未来があることを示唆していた」と過去に述べている
その後、ニコルズさんはNASAの採用担当として長年にわたり、宇宙飛行士にマイノリティや女性を採用するための支援も行ってきたという。
また最近では、テレビドラマ「HEROES/ヒーローズ」で、神秘的な力を持つ少年の大叔母役でレギュラー出演していたそうだ。(了)
出典元:ABC News:Nichelle Nichols, Lt. Uhura on ‘Star Trek,’ has died at 89(8/1)