遺伝子治療により、難聴の子供の聴力が回復
遺伝性の難聴になった子供が、ある種の治療により、再び聴力を回復したことが、ある研究により明らかになった。
遺伝子の変異により難聴になった子供たち
この研究を主導したのは、アメリカ・マサチューセッツ州の都市、ボストンにある専門病院「Mass Eye and Ear」の研究者たちだ。
彼らが主導した共同の臨床試験では、「DFNB9」と呼ばれる一種の遺伝性難聴を患う6人の子供に検査が行われたという。
この難聴は「OTOF」と呼ばれる遺伝子の変異によって引き起こされ、耳から脳への音信号の伝達に必要な、「オトフェリン(otoferlin)」として知られるタンパク質が生成されなくなるそうだ。
6人のうち5人が聴力を回復
この臨床試験は2022年12月に始まり、中国・上海にある復旦大学眼科耳鼻咽喉科病院で行われたという。
そこでは「OTOF」遺伝子を機能させる不活性ウイルスが、6人の子供の耳の中に異なる用量で慎重に導入され、26週間観察が行われたそうだ。
その結果、全聴覚障害と分類された6人の子供のうち5人が聴力を回復し、通常の会話を行う能力を取り戻したことが示された。
研究者らによると、今回の人体臨床試験は、この症状の治療に遺伝子治療を用いた初めてケースであり、画期的な成果だという。今回の研究に携わった「Mass Eye and Ear」のZheng-Yi Chen氏は、次のように語っている。
「難聴は非常に多くの人に影響を及ぼしており、現在までのところ、一般的な難聴を含め、あらゆる種類の難聴を治療する単一の FDA(米食品医薬品局)の承認薬は存在しません。つまり、まったく新しいタイプの遺伝子治療アプローチを実際に使用して、聴覚障害のある子供たちを完全に治療し、聴覚機能を回復させることができたのは、これが初めてなのです」(了)
出典元:ABC News:Children with genetic deafness have hearing restored with gene therapy: Study(1/25)