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小さな動物でも相手の痛みを感じる?ネズミにも“共感”する能力が示される

小さな動物でも相手の痛みを感じる?ネズミにも“共感”する能力が示される
Pixabay

小さな動物には見ているだけで癒してくれる力はあるものの、自分が辛い時に寄り添ってくれることはない…。

 

そんな風にお考えの人は多いが、この見方はもしかしたら間違っているかもしれない。

 

というのも新たな研究により、小さなネズミにも相手の痛みに“共感”する能力のある可能性が示唆されたからだ。

 

高等動物が持つ“共感能力”

 

この研究を行ったのは、神経科学分野についての調査を手掛けるオランダの機関「Netherlands Institute for Neuroscience(NIN)」。研究報告は科学ジャーナル「Current Biology」に掲載された。

 

報告によると、他の仲間が苦しむのを目撃したネズミは、その脳内において自分自身が苦痛を感じた時に働くのと同じ細胞が活性化したとのこと。

 

一方“ミラーニューロン”と呼ばれる細胞の活性化なくして、動物は他の仲間の痛みを自分自身に起きたように感じることはないという。

 

ミラーニューロンと帯状皮質との関係

 

“ミラーニューロン”とは、人をはじめとする霊長類などの高等動物や鳥類の一部においてその存在が認められている神経細胞で、他者が活動する姿を見て模倣し、または共感する能力を司るものと考えられている。

 

つまり他の人間が泣いているのを見て悲しい気持ちになったり、あるいは友人が指を切った際にゾクッとしてしまったりするのは、この“ミラーニューロン”の存在ゆえ、人間に共感能力が備わっているためと考えられてきた。

 

一方、これまでの人間の神経画像処理の研究により、人々が自分に痛みを感じた時、“帯状皮質”と呼ばれる脳の部位が活性化され、同時に他者が痛みを感じる姿を見た時にも、同じ領域が再活性化されることが示されてきたという。

 

そこで研究者は2つの仮説を立てた。1つは“帯状皮質”が“ミラーニューロン”を含んでいるという仮説。2つ目は、この神経細胞が他者の痛む姿を見た時に活性化させるために、人々が顔をしかめ、共感するというものだ。

 

実はこのような直感的でまことしやかな理論は、これまでテストされてこないままだったという。なぜなら今まで、人間個人の脳細胞の活動を記録することが不可能だったからだ。

 

さらにいえば、帯状回皮質の領域が共感に深くかかわっているかを決定づけるために、人間のこの部分の活動を調整させることが不可能だったからと言われている。

 

しかし今回、研究者らは初めて、ネズミにおける共感の理論について実験を行うことができた。

 

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どのような実験が行われたのか

 

この実験において、研究者らはネズミに対して他の仲間が不快な刺激を受けている姿を見せ、脳やその行動にどのような変化が起きたのかを計測。

 

通常、ネズミは恐怖を感じると捕食者に見つかるのを回避するために動きが止まってしまうが、実験においても仲間が不快な刺激を受けている姿を見せつけられたネズミは、動きが止まってしまったという。

 

これにより不快な刺激を受けている仲間に対し、それを見ていたネズミが感情を共有させていたことが示唆されたそうだ。

 

また帯状回皮質の記録と一致し、苦痛を感じる仲間を観察していたネズミは、自ら苦痛を感じた時に活性化される帯状回皮質にある、同じ神経細胞が活性化していたことも示されたという。

 

その後、研究者らは帯状回皮質の細胞の活性化を抑制させるため、他の仲間が苦しむ姿を観察していたネズミに薬品を注射したところ、ネズミは活動を再開させ、もはや動きを止めることはなかったという。

 

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人間はネズミと共感のメカニズムを共有

 

これらの結果から研究者らは、脳は自分が痛みを感じる時と同じ脳細胞を活性化させることにより、他者の痛みを共有していると結論付けた。そしてこのことは今まで情動として示されたことがなく、いわゆるミラーニューロンも運動野でしか見つかっていなかったとしている。

 

これについて研究報告の執筆者の一人であるChristian Keysers氏は、「我々は精神を病んだ犯罪者以外の人間において、他者の苦しむ姿を見た際に帯状皮質の活動が増すということは既に発見していた」とする一方、仲間の苦しむ姿を目撃したネズミの脳内において、人間が他者の痛みを感じるのと同じ部分が働いたことは驚くべきことであるとしている。

 

さらにKeysers氏はネズミが動物の中でも“強い倫理観”を持つものではないが、他者の感情を感じる能力である共感力は進化の過程に起源を持つものであり、「我々は共感の基本的なメカニズムをネズミのような動物と共有している」と指摘している。

 

しかし一方で、多くの精神疾患は、共感性を欠くことが特徴付けられている。実際、Keysers氏も精神を病んだ犯罪者の間では、この部位の活動が著しく低下していると指摘。

 

その上で今回の研究は、他者の感情を共有する神経基盤の発見と、どれほど多くの動物が感情を共有する能力を有するのか、について理解を改めることによって、共感能力とそれを欠く精神疾患について理解を深める大きなステップになると考えられている。

 

薄汚い溝の中で暮らしていたり、人間の住居に侵入して食べ物を漁ったりし、何かと嫌われることも多いネズミたち。そんな彼らにも仲間の痛みに対して共感を見せる能力があるなんて、まさに一寸の虫にも五分の魂ともいうべきことだ。(了)

 

 

出典:Medical XpressI feel you: Emotional mirror neurons found in rats(4/11)

出典:Current Biology:Emotional Mirror Neurons in the Rat’s Anterior Cingulate Cortex(4/11)

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