2700年前の悪魔の絵、粘土板に描かれているのを発見:コペンハーゲン大学
文字を記すのに使われた古代の粘土板に、非常に珍しい悪魔(デーモン・悪霊)の姿が描かれているのが確認された。
病気に関連付けられた悪魔の絵
コペンハーゲン大学のリリースによれば、その粘土板はイラクから出土した約2700年前のもので、病気の治療について記されていたという。
しかし下の方に、横たわった悪魔のような絵(模様)が描かれているのが発見された。
この粘土板には古代のアッシリア人によって文字が書かれていたが、「癲癇(てんかん)」を引き起こすものとして彼らが悪魔を描いたと考えられている。
またこれは、癲癇に関連付けられて描かれた最も古い悪魔の絵とも考えられているそうだ。
角や尻尾、ヘビの舌を持つ悪魔
これを発見したのは、古代アッシリアの研究者であるTroels Pank Arbøll氏。彼はドイツのベルリンにある中東博物館(Vorderasiatisches Museum)で、楔形文字が書かれたこの粘土板を4年間も研究してきたという。
ところが偶然にも、粘土板の裏側(または下の方)に描かれた、一部分が破損した絵を発見。詳しく調べてみた結果、それが複数の角や尻尾、ヘビの舌を持つ悪魔であることが明らかとなる。
そしてこの悪魔は当時の人々が、癲癇を引き起こすものとして描いたと考えられるそうだ。
極めて珍しいケース
Arbøll氏は次のように語っている。
「私たちは、アッシリアやバビロニアの人々がその病気を神や悪魔、または魔力によって引きこされる現象として捉えていたことを、長い間知っていました。そしてヒーラー(信仰療法を行う人間)は超自然的な力、または薬や儀式、呪文によって引きこされる症状などを追い払う責任があったのです。これは、医療文献に描かれた非常に稀な悪魔のイラストの1つと、特定の癲癇の病気とを結び付けることのできた、初めてのケースです。この癲癇の病気をアッシリアやバビロニアの人々は、『Bennu』と呼んでいました」
「病気の治療に関する楔形文字の粘土板に、超自然的な力が描かれるのは、極めて稀なことです。たいていは、儀式を行うヒーラーの姿の1つが描かれ、悪魔それ自体は描かれません。しかしここには、テキストを書いたヒーラーが想像した癲癇の悪魔が示されているのです」
「Bennu」とは、2700年前の医療文献に書かれた病気の1つで、発作や意識の喪失、正気を失うなどの症状を示し、時には患者がヤギのように泣きわめくことから、古代イラクでは恐れられていたという。
また文献では人が癲癇の病気にかかった時には、古代メソポタミアの月の神「シン(Sîn)」の代わりに悪魔が振る舞っていたと書かれているという。
つまり古代のアッシリアやバビロニアの人々は、月と癲癇、そして狂気との間にはつながりがあると信じており、英語の「lunacy(精神異常、狂気)」が「lunar(月)」を語源としているように、このような認識は現代の一部の地域でも見られると述べている。(了)
出典元:UNIVERSITY OF COPENHAGEN:Researcher discovers terrifying epilepsy demon on 2,700-year-old clay tablet(12/20)