米研究チーム、脳死状態の人間にブタの心臓を移植することに成功
アメリカで研究者らが、脳死状態の患者らにブタの心臓を移植することに成功した。
脳死の患者2人に移植
ニューヨーク大学ランゴーン・ヘルス校(NYU Langone Health)は7月12日、遺伝子操作されたブタの心臓を脳死の患者2人に移植したと発表した。
この移植手術は6月16日と7月6日に行われ、心臓は手術後数日間、正常な心臓機能を示したという。
今回の手術を担当したNYU Langone移植研究所の心臓移植外科部長、Nader Moazami氏は「同研究所では将来的にこの臓器を使った臨床試験を進めたい」と声明の中で述べている。
In the past month, our team has successfully performed two heart xenotransplants in brain-dead patients—marking the latest advance toward addressing the nationwide organ shortage.
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— NYU Langone Health (@nyulangone) July 12, 2022
近年、ブタの臓器への関心が高まる
そもそも遺伝子操作されたブタの臓器は、近年臓器不足の中で、研究対象として医学的関心が高まっているという。
実際、昨年9月には、ニューヨーク大学ランゴーン・ヘルス校とアラバマ大学バーミンガム校のチームが、史上初めて遺伝子組み換えブタの腎臓を脳死した人間に移植したそうだ。
また今年の1月には、メリーランド州の57歳の男性、デビッド・ベネットさんが、生きている人で初めて遺伝子操作されたブタの心臓を移植された。
しかしベネットさんは3月に死亡。彼の死因について、移植を行ったメリーランド大学医学部の研究者たちは、新しい臓器に対する単なる拒絶反応ではなく、『複雑な要因』による心不全であると断定している。
ウイルス検査を実施、新しい免疫抑制剤を使わず
今回の移植では、メリーランド大学で行われたのとは異なる方法がとられたという。
例えばNYU Langone校の研究者は、今回新しい免疫抑制剤を使わず、またブタの心臓を運ぶ際には特別な灌流ボックスに入れたという。
このような箱に入れるのは、動物から動物への移植では臓器の働きをよく保つために必要だが、人間同士の移植では必要ないとされてきた。
また研究者は今回、ブタの「サイトメガロウイルス」というウイルスについても広範囲にチェックしたという。
このウイルスはメリーランド大学で移植された男性の心臓から発見されたもので、今回移植に使われたブタの心臓には、感度の高い2種類の検査が行われ、感染していないことが確認されたそうだ。
ブタと人間の心臓の違い
そもそもブタの心臓は人間の心臓とほぼ同じだが、今回の移植手術では決定的な違いが発見されたという。
実際に体重160ポンド(約73kg)のブタの心臓は、体重220ポンド(約100kg)の男性に通常使われる心臓より小さく、血管の大きさや長さも、ヒトからヒトへの移植の時とは異なっていたそうだ。
NYU Langone移植研究所のロバート・モンゴメリー所長は「この研究のより大きな目的は、臓器不足に対処し、救命の贈り物を待っている全国10万人以上の人々に別の選択肢を提供することです」と声明の中で述べている。(了)
出典元:Forbes:Researchers Transplant Pig Hearts In 2 Brain Dead Patients(7/12)
出典元:USA TODAY:Latest organ transplant milestone: Pig hearts to brain-dead patients(7/12)