モーションキャプチャの技術が、運動に影響を与える病気の診断にも有効
映画『アバター』で使われたモーションキャプチャの技術が、医療の世界でも大いに役に立つとする研究成果が報告されている。
人工知能で体の動きを分析
モーションキャプチャとは、俳優の動きをキャプチャして、スクリーン上にリアルなキャラクターを描き出すための技術のこと。
そしてこの技術を使い、人工知能で体の動きを分析することで、運動能力を低下させる病気の重症度を早く測定できるという。
実際に今回の研究では、フリードライヒ運動失調症(FA)とデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の患者を対象に、この技術を使ったところ、優秀な医師よりも2倍早く測定できたそうだ。
そもそもこのような病気の重症度や進行度を追跡するには、通常、患者が標準化された一連の動作を行い、速度と正確さを病院で測定する必要がある。
この評価は、患者にどのようなサポートや治療が必要かを判断する上で不可欠なものだが、実は何年もかかることもあるという。
通常かかる半分の時間で測定
この研究を行ったのは、イギリスのインペリアル・カレッジとユニバーシティ・カレッジ・ロンドン、グレート・オーモンド・ストリート小児保健研究所などの研究者グループだ。彼らは10年間、モーションキャプチャを使った新技術の開発に時間を費やしてきたという。
そしてインペリアル・カレッジのチームは、まずFAの患者を対象にモーションセンサー・スーツをテスト。その結果、専門家が通常かかる時間の半分となる12カ月間で、病気の悪化を予測できることがわかったそうだ。
グレート・オーモンド・ストリート小児保健研究所の別のチームは、5歳から18歳までのDMDの患者21人を対象に、この技術でテストを実施した。その結果、医師よりもはるかに正確に、6カ月後に彼らの動きがどのように変化するかを予測できたという。
このアイディアを思いついた科学者の一人であるインペリアル・カレッジのアルド・フェイサル教授は、これは非常に大きな進歩であるとし、次のように述べている。
「私たちの新しいアプローチは、人間が拾うことのできない微妙な動きを検出します。臨床試験を一変させるだけでなく、患者の診断とモニタリングを改善する能力を備えています」
新薬の開発も早まる可能性
またこの技術を使うことで、前述のような病気の新薬を早く開発できる可能性もあるという。
そもそもDMDの場合、新薬の効果について統計的に有意な結果を得るためには、約18カ月の間に最低100人の患者さんが必要となる。
しかし今回の研究では、新しいシステムを用いることで、6カ月間で15人の患者さんで済む可能性があることが示されたそうだ。(了)
出典元:BBC:Motion capture tech from Avatar films used in disease research(1/22)