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難民が着用したライフベストから、新たな商品を作る企業が注目集める

難民が着用したライフベストから、新たな商品を作る企業が注目集める
Makers Unite

多くの難民が海を渡る際に着用していた救命胴衣を用いて、新たな商品を作る企業の取り組みが注目を集めている。

 

海岸線に残された大量のライフベストを商品に

 

2015年だけで85万人以上に及ぶ数の難民が、自国から逃れて辿り着いたギリシャ。

 

その中の50万人ほどが到着した島、レスボス島は押し寄せた難民をどのように扱うのかということもさることながら、これまでにない問題に直面していた。

 

難民が着用していた数十万にも及ぶ数のライフベストが、海岸線に放置されていたのだ。

 

 

この問題を聞きつけたのが、オランダの首都アムステルダムで社会問題の解決を目指す事業に取り組む企業「Makers Unite」だ。

 

同社は放置されていた5000ものライフベストを、アムステルダムへ持ち帰ることを決定。

 

オランダに暮らす難民がキャリアを確立させるための手助けを行う6週間のプログラムの一環として、既に71人の難民がギリシャより持ち帰られたライフベストを用い、バッグなどの商品の製作と販売を行ってきたという。

 

Makers Uniteで商品製作を行う難民は失業給付金に加え、週に8時間の労働で150ユーロ(約2万円)の額を手にしているとのことだ。

 

「我々は新たにやってきた人々と、この廃棄物の双方に2度目のチャンスを与えています」

 

そう語るのはMakers Uniteの共同創設者、Thami Schweichler氏。

 

Schweichler氏は「我々の商品が難民への関心を高めると同時に、彼らを助け未来を築き上げるのを望んでいます」とも付け加え、自社が手掛ける商品が難民に関する議論を促すものとなることを願っている。

 

 

難民が製作した商品はMakers Uniteのウェブサイト上で購入することができ、同社は月に100から200もの商品を販売しているという。

 

自分自身もライフベストを着用して海を渡った難民たち

 

「働いている際、これらのライフベストを着た人のことを考えます」

 

そう語るのはRamzi Alokerさん(46)だ。

 

「彼らは誰で、彼らに何が起きたのか?私自身の旅についても覚えています。海は暗く、ギリシャの山は急こう配でした」

 

シリア難民のAlokerさんは、ダマスカスに住んでいた頃には若い女性向けの洋服のデザインを行っていたという。

 

そんな彼も現在はMakers Uniteの下、ライフベストを用いてノートパソコン用ケースとトートバッグを製作している。

 

ライフベストは危険な航海の記憶を呼び起こす

 

一方、危険と隣り合わせの航海で着用していたライフベストは、時に恐ろしい記憶を思い起こさせるものともなる。

 

2015年にギリシャへと渡ってきたシリア難民のEman Haj Omarさんとその夫Ammarさんにとっても、ライフベストは当初見ていて心地よいものではなかったそうだ。

 

シリアのアレッポで機械を用いた縫製を手掛けていたAmmarさんが同地を離れることを決意したのは、Ammarさんの子供が通う学校が爆撃された時だったという。

 

二人は密入国業者に3000ユーロ(約40万円)を支払い、トルコ南西部の港町ボドルムからギリシャのコス島まで4時間かけてゴムボートで渡航。

 

「我々は(ボートが)沈むのではないかと恐れていました」と語るOmarさん。

 

「辺りは暗く、我々の子供は泣いていました」

 

そんな二人にとって、ライフベストは当初恐ろしい航海を思い起こさせるものであったという。

 

Ammarさんは「それは溺れた子供を思い起こさせました」という。

 

「ギリシャのテレビで見た、海岸にいた男の子は赤いTシャツを着ていました」

 

Omarさんによると、その男の子は3歳のシリア人難民のAlan Kurdi君だという。海岸に打ち上げられた彼の存在は世界中に伝えられ、深い悲しみを呼んだ。

 

 

一方そんなOmarさんとAmmarさんも、今ではライフベストを用いた商品製作に慣れたという。

 

また商品製作のためのワークショップは、地元の人々と触れ合い、オランダ語を学ぶための非常に良い機会になっているとしている。

 

プログラムのお陰で仕事を見つけた人も

 

これまでのところ、Makers Uniteのプログラムにより仕事を見つけた難民は参加者のうち10%ほどだという。

 

一方、その他の参加者も勉強やインターンシップを始めたり、中には自営業を営み始めた者もいるといい、いずれの参加者も順調に歩み始めているようだ。

 

AlokerさんもオランダのアパレルブランドSuitsupplyで働くに先立ち、2か月間の研修を間もなく開始させるという。

 

AlokerさんはMakers Uniteで自らが製作した商品について、「これらのバッグはダマスカスとヨーロッパの間で起こっている悲劇を人々に伝えることができます」と語る。

 

「それは我々が直面した危険と、なぜ我々がここにいるのかということを、人々に考えさせることができるかもしれません」

 

 

難民が身に着けたライフベストを用い、難民が製作する商品の数々。昨今日本では難民問題に対する関心が薄らいでいるように感じるが、彼らの受難が終わったわけではない。

 

彼らが体験したことを少しでも身近に感じるためにも、Makers Uniteによる商品を購入してみてもよいかもしれない。(了)

 

出典:The Guardian:These lifejackets saved refugees at sea. Now they are providing jobs for survivors (4/13)

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