風力発電により多くのオジロワシが被害に、猟で使用する鉛弾による中毒死も増加
環境に優しい再生可能エネルギーを生み出すとして、世界でも注目されている風力発電。しかしこの影響で鳥たちが被害を受けていることを示す1枚の写真がネットに投稿され、注目を集めている。
風車に衝突して死んだオジロワシ
その写真をツイッターに投稿したのは猛禽類医学研究所 齊藤慶輔氏。写真には風力発電の風車に衝突して死に、袋詰めにされた多くのオジロワシの姿が映っていた。
山積みにされた大きな袋。これらは全部、風力発電用の風車に衝突して死んだオジロワシだ。温室効果ガスを出さない発電方法として、エコの代名詞的に取り上げられることもある風力発電。その裏で絶滅の危機に瀕した猛禽類が次々と死んでいる現実を直視しなければ、野生動物との共生は永遠に実現しない。 pic.twitter.com/qtCKQEQida
— 猛禽類医学研究所 齊藤慶輔 (@raptor_biomed) November 14, 2017
オジロワシは、ユーラシア大陸北部を中心に生息する大型の野鳥で、国内では北海道のみで繁殖しているとされ、環境省の絶滅危惧種に指定されている。
ただ先日は青森県でも繁殖が確認され、本州にも生息していることが分かり、注目されていた。
風力発電施設の直近を飛ぶオジロワシ。雪に埋もれたり、キツネに持って行かれたりして、発見されなかった被害個体は数知れず。少なくともオオワシやオジロワシが頻繁に利用する場所には建設するべきではないが、政府は北方領土での日露共同経済活動として、風力発電所の建設を優先5項目に入れている。 pic.twitter.com/aR1Hnsjzqj
— 猛禽類医学研究所 齊藤慶輔 (@raptor_biomed) November 16, 2017
齊藤氏は野生動物専門の獣医師で、北海道を拠点に傷ついた鳥を治療し、野生に返す活動を行ってきたという。その様子はサーモスブランドのCMでも紹介されている。
動画の中で彼は「人間の責任として、きちっと治るものは治して野生に返す」という自らの考えを述べている。
200羽以上が鉛弾による中毒で死亡
また齊藤氏らは現在、猛禽類が鉛弾によって中毒死している実態を訴え、全国で鉛弾を撤廃するよう働きかけている。
鉛弾は狩猟の際に使われるもので、これによって射止められた動物の内臓などが山野に残され、それを猛禽類が食べるという。
その結果、北海道ではオオワシ、オジロワシ、クマタカが200羽以上鉛中毒で死亡しているそうだ。
狩猟の際、鉛弾で射止められた獲物の内蔵や食に適さない部分が山野に残される。北海道では、これを食べたオオワシ、オジロワシ、クマタカが200羽以上鉛中毒で死亡している。本州以南でもイヌワシやクマタカの鉛中毒が複数確認されている。予防原則に基づき、全国の狩猟から鉛弾を撤廃するべきだと思う pic.twitter.com/NbZWMNUDeH
— 猛禽類医学研究所 齊藤慶輔 (@raptor_biomed) November 16, 2017
滝川クリステルさんも鉛弾禁止を訴える
齊藤氏は、滝川クリステルさんが去年の春に立ち上げた一般財団法人 CHRISTEL VIE ENSEMBLE (クリステル・ヴィ・アンサンブル)とともに、全国で鉛弾の使用を禁止する嘆願書の署名を集めている。
動物臨床医学会のイベントとして行われた、滝川クリステルさんとのトークショーの中で、バードストライク(発電用風車との衝突)や鉛中毒についてお話しさせていただきました。 pic.twitter.com/VnDxw1qgWS
— 猛禽類医学研究所 齊藤慶輔 (@raptor_biomed) November 20, 2017
現在、(財)クリステル・ヴィ・アンサンブルとともに、全国で鉛弾の使用を禁止する嘆願書の署名を集めています。下記URLよりダウンロード・印刷いただき、協力を呼びかけていただければ幸いです。https://t.co/YZvTNhcaQc
※ オンラインでは、下記より賛同いただけます。https://t.co/PK7O3BX5bn
— 猛禽類医学研究所 齊藤慶輔 (@raptor_biomed) November 20, 2017
滝川クリステルさんも、change.orgのサイトにおいて次のように述べている。
「中毒死したオオワシの胃から、鉛弾(ライフル弾や散弾)の破片が発見されています。オオワシは狩猟の際に撃たれたエゾシカの死体と一緒に鉛弾の破片を食べ、鉛中毒になり死亡しているのです」
「鉛弾の規制が遵守されていない現状を打破するためにも、鉛弾をカスミ網などと同様の『使用禁止猟具』扱いにし、狩猟時の鉛弾については使用のみならず、流通や所持に関しても原則的に規制することを求めます」
「流れは確実に規制強化の方向へ動いています。いま私たちが声をあげれば、全国規模の規制の後押しとなります。野生動物の鉛中毒根絶元年が宣言される日が、一日でも早く来ることを心から願っています」
change.orgにおける「クリステル・ヴィ・アンサンブル」のページでは、この活動への賛同者を募っている。さらに詳しい情報も載っているので、ぜひ訪れていただきたい。(了)
出展元:change.org:狩猟における鉛弾(ライフル弾、散弾)の使用禁止をいますぐ、日本全国で。