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チョコの名門・レダラッハに漂う2つのスキャンダル──差別と虐待疑惑とは

チョコの名門・レダラッハに漂う2つのスキャンダル──差別と虐待疑惑とは
Läderach Japan/Instagram

2025年2月に日本向けオンラインショップがオープンし、日本再上陸を果たしたスイスの老舗チョコレートメーカー、レダラッハ(Läderach)。9月には銀座と横浜に実店舗もオープン予定だとされており、職人技が光る繊細なチョコレートの再登場を歓迎するスイーツファンも多い。

 

一方で、スイス国内でのブランドイメージを大きく揺るがす2つのスキャンダルが存在するのをご存知だろうか。

 

スキャンダル1:女性・LGBT差別疑惑

 

創業者ユルグ・レダラッハ氏は、スイスの保守的なキリスト教団体「Christianity for Today」の会長を長年務めており、中絶や同性婚に反対する立場を公言してきた。さらに、息子で現CEOのヨハネス・レダラッハ氏も同団体に所属しており、「March for Life」と呼ばれる中絶反対デモを支援している。

 

こうした姿勢から、2020年頃からスイス国内で女性差別やホモフォビアであるとの批判が高まり、LGBTQ団体や人権活動家が不買運動を展開。スイス国内では、店舗前での抗議やボイコットが相次いだ。また、スイス航空(SWISS)は「ブランドイメージに合わない」として、レダラッハとの提携を終了している。

 

ヨハネス氏は、管理職の60%が女性であることや同性愛者の従業員がいることを示し、企業内での差別を否定した。しかし、信仰と経営は分離すると強調している一方で、個人の信念としてキリスト教的価値観を守る姿勢は変えないとも明言している。

 

スキャンダル2:宗教系学校での児童虐待

 

2023年には、さらに深刻なスキャンダルが浮上した。創業者ユルク氏が1995年に設立に関わったキリスト教系私立学校で、生徒たちがベルトで殴られるなどの体罰を受けていたという内容だ。この告発は、スイス公共放送SRFによって報道された。一部では、ユルク氏本人が虐待に関与していたとの証言もあったという。

 

同校が実施した外部調査の結果、複数の元教師や宗教団体メンバーによる虐待行為が確認されている。ユルク氏の息子であり、現CEOであるヨハネス・レダラッハ氏は、学校での虐待を全面的に非難し、「自分の信念や価値観に反する」とし、提携企業に宛てた書簡で、「現経営陣は教会とは無関係であり、父ユルク氏は経営に関与していない」と強調した。

 

この報道後、チューリヒ映画祭はレダラッハとの提携を解消するなど、スイス国内でのブランドイメージは大きく損なわれた。

 

2020年3月に片岡物産との契約終了とともに日本から姿を消したレダラッハ。宗教的・政治的信条を持つ経営者と企業のイメージを、どう切り離して捉えるべきかは、今後も議論の的となりそうだ。日本再上陸は、どのような結果となるのだろうか。(了)

 

参考:SWI「Swiss chocolatier denies being homophobic and misogynist」(2020/1/20)

参考:SWI「Child abuse allegations: ‘The Läderach brand has been badly damaged’」(2023/9/25)

参考:SWI「Investigation into child abuse at religious school ‘not necessary’」(2023/10/12)

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