Jアラートのサイレンはなぜ不気味なのか?音の決定には伝達距離や聴覚弱者への配慮もあった
ミサイルが日本上空に飛来した時などに発令されるJアラート。このサイレンが鳴り響く様子は海外メディアでも取り上げられているが、なぜあのような音になったのか。その経緯を調べてみた。
Jアラートの発令の手順とは?
そもそも国民保護のための情報伝達手段にはどのようなものがあり、警報はどんな手順で発令されるのか。内閣官房の国民保護ポータルサイトでは、次のように説明している。
「国は武力攻撃から国民の生命、身体又は財産を保護するため緊急の必要がある時は、警報を発令し、直ちに都道府県知事等に通知します。また、住民の避難が必要な時は都道府県知事に対し、住民の避難措置を講ずるよう指示します。これを受け都道府県知事は、警報の通知や避難の指示を行い、市町村の住民広報を通じて住民に情報が伝達されます」
「武力攻撃事態等においては、このような情報が迅速かつ確実に伝達されることが大変重要となります。このため、国民保護のための情報伝達の手段については、防災無線、衛星通信など複数の経路を確保することとしています」
「警報が市町村から住民に伝達される際には、武力攻撃が迫り、又は現に武力攻撃が発生したと認められる地域に当該市町村が含まれる場合には、原則としてサイレンを使用して注意喚起が図られることとなっています」
そしてこの国民保護に係る警報のサイレン音は、平成17年7月に政府が決定している。
サイレンの要件を踏まえ3つの候補音
しかしなぜこのような音に決まったのだろうか。内閣官房の資料によれば、まず警報で使用するサイレンは、「国民の保護に関する基本指針」(平成17年3月25日閣議決定)で、国が定めると規定されたという。
そして平成17年5月~6月にかけて、消防庁に設置された「武力攻撃事態等における警報サイレン音に関する検討会」(座長:東京大学大学院教授 廣井 脩 他10名)において議論が交わされたそうだ。
その検討会では防災行政無線で放送できることを前提として、国民保護に関する警報サイレンには以下の要件が必要であるとされた。
- 武力攻撃が迫り、又は武力攻撃が発生したことを明確に認識できる。
- 伝達距離が大きい。
- 緊急性が感じられると同時に、過度の緊張感を与えない。
- 高齢者や聴覚弱者にも配慮。
これらの要件を踏まえて3つの候補音が選定され、検討結果が内閣官房に報告されたとしている。
通常より聴覚弱者が聞き取りやすい
サイレンの3つの候補音は、いずれも消防信号等で使用している既存のサイレン音に比べ、伝達距離や聴覚弱者に聞きやすいことにおいて優れていると評価されたものだという。
そして検討の結果、3つの候補音には以下のような評価が下される。
①候補音1は、既存サイレンとの区別がやや難しい。
②候補音2は、緊急性を感じさせること、伝達距離の大きさについてやや評価が低い。
③候補音3は、実証的評価として既存サイレン音と区別し易く、 伝達距離の大きさ及び緊急性を感じさせること、さらに学術的評価からも聴覚弱者に聞きやすい音であると評価された。
これに従い、報告された3つの候補音の中でも最も評価が高いと思われるものを、現在使用されているサイレン音として決定したという。
またサイレン音を国民へ周知するために、 これまでも内閣官房の国民保護ポータルサイトにおいて 試聴することを可能としてきたそうだ。(了)
出典元:内閣官房国民ポータルサイト:国民保護のための情報伝達の手段
出展元:資料1:武力攻撃事態等におけるサイレン音の決定について