中国でクローン技術による猿が誕生、“非常に残酷”だとして批判も浴びる
中国でクローン技術による猿が新たに誕生するも、その手法が“非常に残酷”であるとして批判を浴びている。
遺伝子操作により病気を持って生まれる
クローン技術によって猿を誕生させたのは、中国科学院神経科学研究所の研究者ら。
実験においては、1体のドナーから5匹ものクローンの猿が誕生。
Monkeys cloned from those originally produced via CRISPR gene editing are thriving in China. Some researchers are concerned about ethical issues. Others contend the primate clones could provide improved animal models of human diseases https://t.co/XffrK2h71w … pic.twitter.com/39ma83FLB0
— delthia ricks 🔬 (@DelthiaRicks) January 30, 2019
このクローンの作製方法は、かつて世界初の哺乳類のクローンとして知られた羊のドリーを誕生させたのと同じ手法であるという。
しかしこれら5匹の猿を作製する際、科学者らはドナーの猿における特定の遺伝子を操作。
医療研究との名目で、5匹の猿が病気を持って生まれるよう、仕掛けを施していた。
睡眠障害や精神病の症状を示す猿たち
研究の際に操作された遺伝子はBMAL1と呼ばれるもので、規則正しい生活リズムを送ることを助ける働きを持つもの。
実験においては、科学者らはこの遺伝子が正常に機能しないように手を加えた。
この遺伝子が正常に働かないと、睡眠障害やホルモン障害といった症状を持つ危険性が非常に高まるという。
研究者らによると、既に5匹の猿たちは不安感や鬱、睡眠不足といった症状を見せており、さらには“統合失調症のような行動”までをも示しているとのことだ。
China clones gene-edited disease monkeys https://t.co/UrLN70Yrms pic.twitter.com/V3onIXaCcm
— Newsweek (@Newsweek) January 24, 2019
これについて研究に携わったHung-Chun Chang氏は、声明においてコメント。
“生活リズムの不調は睡眠障害や糖尿病、癌や神経変性疾患といった、人間における様々な病気の原因となりうる。したがって我々のBMAL1が正常に働かない猿は、発病の原因や治療法の研究において利用できる”としている。
動物愛護団体は批判、世界では猿を用いた多くの実験
一方、この実験は動物愛護団体などからの批判に晒されている。
米国発祥の動物権利運動団体「動物の倫理的扱いを求める人の会(PETA)」の英国支部に所属するJulia Baines氏は、この実験について「遺伝子操作したり、クローンを作ったりすることは、動物に苦しみをもたらす非常に残酷な手法です」と憤りを見せる。
しかし実験に携わったMu-ming Poo氏によると、今後も遺伝子操作を施された猿は作製されていく予定とのこと。
その理由として挙げられるのは、人間と霊長類における遺伝子の類似性だ。
霊長類は約95%もの遺伝子が人類と同じものとなっており、さらには生理学的にも身体構造上も人類と似通っている。
そのため生物医学研究においては、世界でも多くの猿が実験に用いられており、その数は年間最大10万匹に及ぶこともあるという。
しかしPoo氏は、この数を劇的なまでに減らすことが可能であると指摘。「この数は、実験的研究における不要な情報が少ない遺伝子的に統一されたバックグラウンドを持つ猿を用いることにより、劇的なまでに減らすことができる」としている。
「これは人間ではない霊長類の生物医学研究における倫理的な使用を劇的なまでに助ける」
Nick Tsagaris-Chinese Scientists Clone Five Baby Monkeys After Editing Genes to Induce Mental Illness to Aid Research
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遺伝子操作により病気を持って生まれたクローンの猿たち。このような動物が人の手によって誕生するのは恐ろしいことであると感じる一方、医学のさらなる向上のためにはやむを得ないことなのかもしれない、とも思ってしまう。(了)
出典:NEWS.com.au: China’s gene-edited monkey clones raise ethical concerns(1/23)