2つの人工衛星が、米上空で衝突しかけていた
宇宙空間を高速で移動している2つの人工衛星がつい最近、衝突しかけていたのをご存じだろうか。
15m離れて通り過ぎる予定だったが…
その衛星とは赤外線天文衛星の「IRAS」と、アメリカの実験衛星「GGSE-4」。すでに両方とも運用が停止されているが、今も上空を時速5万3000kmの速さで移動し続けているという。
そしてこの2つの人工衛星が、アメリカのペンシルベニア州の都市、ピッツバーグの上空900kmの地点で、現地時間の1月29日の23時39分後頃に最接近し、15mから30m離れて通りすぎると見られていた。
宇宙ゴミの観測を行っているグループ「LeoLabs」は当初、2つの衛星の衝突する可能性は1%しかないと考えていたが、その後、衝突の可能性が高まったと主張し始める。
3/ These numbers are especially alarming considering the size of IRAS at 3.6m x 3.24m x 2.05m. The combined size of both objects increases the computed probability of a collision, which remains near 1 in 100.
— LeoLabs, Inc. (@LeoLabs_Space) January 27, 2020
18mのブームが取り付けられているのを知る
衛星の衝突が懸念されていた理由は、「GGSE-4」の形にある。
「GGSE-4」には太陽帆やアンテナを装備するために18mのブームが取り付けられた。しかしこのことを知らなかった「LeoLabs」は、29日の午後時点で衝突の可能性を5%に上昇させた。
4/ Adjusting our calculations to account for larger object sizes (by increasing our combined Hard Body Radius from 5m to 10m), this yields an updated collision probability closer to 1 in 20.
— LeoLabs, Inc. (@LeoLabs_Space) January 29, 2020
このためさまざまなメディアも取り上げたが、結局1月30日の午前2時に「LeoLabs」は、宇宙ゴミは確認されていないとツイート。2つの人工衛星が衝突することなく、通り過ぎたことを報告した。
Thankfully our latest data following the event shows no evidence of new debris. To be sure, we will perform a further assessment upon the next pass of both objects over Kiwi Space Radar occurring later tonight.
— LeoLabs, Inc. (@LeoLabs_Space) January 30, 2020
破片が他の衛星にダメージを与える
もっとも上空で2つの人工衛星が衝突しても、破片は落下の際に大気中で燃え尽きてしまうため、地上に影響はない。
ただし衝突後、軌道上に破片が残されると、他の人工衛星にダメージを与えかねない。しかもそれらの宇宙ゴミは、数百年間も残り続けていく。
実は2009年にも、宇宙空間で大規模な衝突が起きている。
この時は民間のイリジウム衛星と、機能を停止したロシアの衛星が、シベリア上空で衝突。数千個のデブリが撒き散らされたという。
国際的なガイドラインでは、地球の低軌道上にある人工衛星は、ミッションを終えてから25年後には軌道から外されなければならないと変更されたが、今回の衛星はルールが変わる前に打ち上げられたもので、適用外となっていた。(了)
出典元:BBC:Two satellites set for close shave over US city of Pittsburgh(1/29)