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国際司法裁判所がイスラエルに「大量虐殺」の阻止を命令、停戦には至らず

国際司法裁判所がイスラエルに「大量虐殺」の阻止を命令、停戦には至らず
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国際司法裁判所(ICJ)は26日、南アフリカが求めた暫定措置について判断を下し、イスラエルに対し、ガザ地区での大量虐殺を阻止するよう命じた。

 

ガザ地区での人道状況の改善も命令

 

国際司法裁判所はイスラエルに対し、「大量虐殺を直接行うことを阻止し、公的な扇動を処罰するために、できる限りあらゆる措置を講じる」よう命じたという。

 

またイスラエルに対して、ガザ地区での人道状況を改善させる措置をとるようにも命じた。しかし、ガザ地区での停戦を命じるまでには、至らなかった。

 

ただイスラエルはこれらの命令を順守するために、どのような措置をとったのかを、1カ月以内に裁判所へ報告しなければならない。

 

各国の反応

 

もっとも国際司法裁判所の暫定命令は、強制力を伴うものではない。ウクライナでの戦争でも、国際司法裁判所は約1カ月で、「停戦」の暫定措置命令を出したが、ロシア側はそれに従っていない。

 

しかしパレスチナの国連常任代表リヤド・マンスール氏は声明の中で、「ガザでの大量虐殺を阻止するための措置を取るようイスラエルに求めた、ICJの命令は歴史的である」と述べたという。

 

またイスラエルを支援するドイツ、そしてEUやトルコも、イスラエルに国際司法裁判所の判断に従うよう求めた。

 

イスラエルの最大の支援国であるアメリカは、このケースについて「無価値」だと一蹴。大量虐殺の申し立てには根拠がないと信じていると述べ、裁判所が判決で大量虐殺に関する認定や停戦の呼びかけをしていないと指摘した。

 

イスラエルのネタニヤフ首相も裁判所が「停戦命令」を出さなかったことに満足しており、次のように述べた。

 

「国際法に対するイスラエルの取り組みに、揺るぎはない。同様に、我が国と国民を守り続けるという、私たちの神聖な決意も揺るがない。他の国と同様、イスラエルには自国を守る固有の権利がある。イスラエルのこの基本的権利を否定しようとする卑劣な試みは、ユダヤ国家に対する露骨な差別である。そしてそれは、正当に拒否された」

 

ガザ地区の人々の間では失望

 

パレスチナ支持者の間では、南アフリカが要求していたように裁判所がさらに踏み込んで、イスラエルにガザ地区での停戦を命令しなかったことに失望感が広がったという。

 

ガザ地区で暮らすパレスチナ人も、人道支援の拡大を許可する命令など、国際司法裁判所の判断のいくつかの側面を歓迎しているものの、やはり「停戦命令」を出さなかったことに不満を感じているそうだ。

 

しかしそれでも、裁判所の判断が、イスラエルの犯した残虐行為と大量虐殺を世界に示すためには、不可欠なステップであると信じているという。

 

パレスチナの若者を拘束

 

一方、ガザ地区南部のハンユニスでは、戦闘が激化する中、数千人規模のパレスチナ人が逃れているという。

 

しかもイスラエル軍は1月25日、パレスチナ人が身を寄せていた学校から避難を命じ、説明もないまま多くの若者を拘束したそうだ。

 

学校に避難していたイスラー・カシャンさんは、次のように語っている。

 

「イスラエル軍は私たちに退去を許し、一定の距離を歩かせたのち、兵士らは若い(パレスチナ人の)男性を捕まえ、脇で所持品を検査しました。そして兵士らは何人かの若い男性たちを連れて行き、他の人は残されました」

 

またパレスチナの通信社「Wafa」によれば、イスラエル軍はガザ地区中部にあるaz-Zawayda地区を襲撃し、1人の少女を含む3人のパレスチナ人が死亡したという。

 

さらにイスラエル軍の爆弾が、ヌセイラト難民キャンプの西にあるアル・ハサイナ地区にある住宅に落とされたそうだ。

 

南部のハンユニスでも、イスラエル軍の戦車がナセル病院周辺を攻撃し、無人機が医療センターの庭や建物に向けて激しく発砲、内部にいる全員を危険にさらしている。

 

ミネアポリス市議会で停戦決議案が可決

 

アメリカのミネソタ州にあるミネアポリス市議会では25日、ガザ地区での停戦決議案に対する投票が行われ、9対3で可決された。

 

この決議では、イスラエルと「ハマス」との紛争の停戦を求めると同時に、イスラエルへの軍事支援を停止し、ガザ地区のイスラエル人捕虜を解放し、イスラエルの軍事刑務所からパレスチナ人を解放することも求めている。

 

実はオークランドやデトロイト、サンフランシスコなど、すでにいくつかのアメリカの大都市では、ガザ地区での停戦決議を採択しているという。

 

無論、地方自治体は外交政策に関してほとんど権限を持たない。しかしアイオワ州での停戦決議案の推進に貢献したディーマ・トータ氏は、次のように語っていた。

 

「地方政府にはこうした声を増幅させる能力があり、歴史の正しい側に立つ能力があるのです。これに反対する住民がいた、という記録を残す能力があるのです」

 

ヨルダン川西岸で殺された米国籍の若者

 

また民主党のパレスチナ系女性下院議員のラシダ・タリーブ氏は、ブリンケン国務長官に対し、ヨルダン川西岸地区で殺害されたパレスチナ系アメリカ人の若者の事件を捜査するよう要求した。

 

その若者とは、タウフィク・アジャクさん(17)で、彼は今月、ヨルダン川西岸地区のラマラで、イスラエル兵と入植者によって殺害されたという。

 

アメリカ政府は、イスラエルにこの事件を調査するよう求めていたが、自国民の犯した人権侵害への報告が信用できるか、どうかは疑わしい。

 

またバイデン政権は、2022年にイスラエル軍によって殺害されたアメリカ国籍のシリーン・アブ・アクレー氏(アルジャジーラ所属)の事件について、アメリカによる捜査の開始を拒否している。

 

ガザ地区の保健当局は1月26日、過去24時間で少なくとも183人のパレスチナ人が死亡、377人が負傷したと発表。また昨年の10月7日以来、少なくとも2万6083人のパレスチナ人が殺害され、6万4487人が負傷したと明らかにした。(了)

 

出典元:Al Jazeera:Israel’s war on Gaza live: Israeli attacks on shelters a ‘pattern’, says UN(1/25)

出典元:Al Jazeera:Israel’s war on Gaza live: Israel must prevent genocide in Gaza, says ICJ(1/26)

出典元:The Guardian:ICJ ruling increases pressure on Israel to prevent civilian deaths in Gaza(1/26)

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