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新型コロナに感染したネコ、無症状でも肺に炎症、一定期間再感染せず:東京大学

新型コロナに感染したネコ、無症状でも肺に炎症、一定期間再感染せず:東京大学
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東京大学医科学研究所が、新型コロナウイルスのネコへの影響を調べ、その研究結果を発表した。その結果、無症状でもネコの肺に炎症が残り、回復後の一定期間は再感染しなかったことが明らかになった。

 

ウイルスが増殖する臓器などを調査

 

この研究を行ったのは、東京大学医科学研究所感染・免疫部門ウイルス感染分野の河岡義裕教授らの研究グループ。彼らは以前、同居する飼いネコの間で、SARS-CoV-2が直接接触により効率的に感染伝播することを明らかにしたという。

 

これまでも飼いネコやイヌ、動物園のトラや農場のミンクなど、ヒト以外の生物でのSARS-CoV-2感染例が報告されており、種を超えて感染することが明らかになっていた。

 

ただし一度新型コロナに感染した動物の長期的な影響は、これまでほとんど明らかにされてこなかったそうだ。

 

そこで今回、同研究グループは、ウイルスが効率よく増殖する臓器や、感染によってダメージを受ける臓器について詳細に調査。回復後のネコにおける長期的なウイルス感染の影響を調べ、回復後に再感染するかも、免疫の関点から解析したという。

 

鼻や気管でウイルス増殖、いずれも無症状

 

研究グループはまず、ネコが新型コロナに感染してから3日後、6日後、10日後にそれぞれ、呼吸器を含め全身の臓器におけるウイルスを検出した。

 

すると上部呼吸器(鼻、気管)においては、感染6日目までウイルスの増殖が見られるたが、一方で下部呼吸器(肺)においては、3日目のみに、肺の限られた部分で検出されるに留まったそうだ。

 

ただし消化器や心臓、脳といった臓器からは、ウイルスは分離されなかったという。

 

ウイルスが上部呼吸器においてよく増殖することは、ネコ個体間で効率よく伝播することと一致しているものの、いずれのネコも無症状で、発熱や体重減少、咳・くしゃみ等の呼吸器症状を示すことはなかったそうだ。

 

無症状でも肺に炎症、長期に残存

 

また感染3、6、10日後のネコの肺を病理解析したところ、感染性ウイルスが肺から検出されなかった個体においても炎症が観察されたという。

 

この原因としては、肺局所におけるウイルスの増殖が要因ではなく、炎症性サイトカインなどの間接的要因により、組織が炎症ダメージを受けることが考えられるそうだ。

 

さらに、ウイルスの感染から無症状のまま回復したネコの、感染4週間後の肺の病理解析を行ったところ、慢性化した炎症像が4週間という長期にわたり残っていることが判明。

 

肺の炎症が特に強いネコでは、新型コロナウイルス感染症の重症患者と同じ程度のダメージが見られたという。

 

4週間後も再感染せず

 

また再感染するかどうかを調べるために、SARS-CoV-2に感染し回復したネコ(感染後4週間が経過したネコ)に、同じウイルスを接種したところ、本来ウイルスの増殖が見られるはずの、鼻や気管、鼻洗浄液中においてもウイルスが検出されなかった。

 

このことは、ウイルス感染から回復した個体、同居ネコからウイルスに感染し回復した個体、それぞれに共通していたという。

 

これらの結果は、一度感染した個体において、新型コロナウイルスに対し免疫記憶が残り、再度同じウイルスに感染しにくくなる「防御的免疫記憶」が(4週間という実験期間では)成立したことを示唆する、と伝えている。

 

無症状でも肺に炎症が残るという点が、人間にも共通するものならば、若い人も感染しないよう注意した方がいいに違いない。(了)

 

 

出典元:東京大学医科学研究所:新型コロナウイルスに感染し回復したネコは無症状にもかかわらず 長期間、肺に炎症ダメージが残り、また一定期間は再感染しない

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